長女がチャットGPTに相談したことをきっかけに、巨人の監督だった阿部慎之助さんが逮捕されるという事件が話題だ。相談自体に問題はないが、後先考えずに生成AIの回答を真に受けて行動したことには疑問符がつく。
これは日本に限ったことではない。米国では多くの若者がチャットGPTに悩みや人生相談をした結果、銃乱射事件や自殺などが起きている。
質問者が求めるものに適した回答を提案してくれるAIチャットボット。やり取りを繰り返せば相談者の思考パターンや思想を織り込んでくれるので、相談者の「聞きたかった回答」になりやすい。
ただ、問題はその回答をどう受け取るかだ。米国でも回答の指示通りに若者が自殺したことで、親たちが運営元のオープンAI社を訴えている。他のAI企業も同様に、責任を追求される裁判に巻き込まれている。
では、どこまで運営側に責任があるのか。それを誰も答えないのに安全性基準や規制の話が進むのには違和感を覚える。
チャットGPTは相談者の問いに対し、「自殺に必要な縄の結び方や窒息死までにかかる時間、事前に体をきれいにしておく方法などを説明していた」と、自殺者の親は話しているが、AIは聞かれたことに回答しただけだ。
問題はそこではなく、AIチャットボットの回答に何の疑問も抱かず、検証もせず、そのまま受け入れることの方が問題だ。 例え人間相手でも、相手の言葉をそのまま鵜呑みにすることが危険なことなんて、百も承知のはず。そんな判断もできない若者が増えていることにこそ、警鐘を鳴らすべきではないだろうか。
仕事を失う程度なら、まだやり直しはきくが、自殺や殺人など取り返しのつかないことをしてしまってからでは遅すぎる。今からでもAIチャットボットを使うときは、回答をそのまま鵜呑みにせず、自分なりに考えて検証し、このまま行動を起こしても構わないのかどうかをよく考えよう。それでも答えが出なければ、親や友人など信頼できる人に相談してから行動を起こそう。こういった指導や教育が必要なこと自体、現在人の危機回避能力がいかに低下しているかがわかる。
すでに若者に対してSNSの使用を禁止する国も出てきているが、このままだとチャットGPTやAIもその対象にされかねない。そうなると、若者にとって大きな損失になることは間違いない。

