開催中の国会で自民と維新は 「副首都整備」法案成立を目指している。理由は〝東京の首都機能が大規模災害等で一時停止した際の首都機能バックアップが必要〟との見地から。表向きは「副首都=大阪」ではないが、選ばれる条件として首都圏以外の場所を大前提に「一定規模のインフラが既に整っていて、道府県と政令指定都市一体となっている事」と定義、道府県からの立候補を受けて国が指定し整備資金を出す。政令指定都市を抱える道府県で関心を示しているのは大阪と福岡ぐらい。折も折、吉村洋文府知事は維新の会の『大阪都構想勉強会』で「住民投票範囲を大阪市民のみから府民全体に広げる」アイデアを示した。何やら動きが急、論点整理してみた。

同時に「大阪都」へ名称変更
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3度目投票は範囲拡大
大阪都構想は簡単に言うと「大阪市を廃止し、東京のように都直轄の特別区に再編する」計画。元々は府市が競い合うムダをなくす〝二重行政解消〟が目的だったが、今や「大阪維新の会」が府知事だけでなく政令指定都市の大阪市長と堺市長も制し「大阪の二重行政は解消」との認識が強い。
しかも「大阪市の都構想住民投票」は過去2回否決され、その政治責任を取る形で、時の橋下徹元知事と松井一郎前府知事の2人が政界を去っている。維新の会にとっての〝悲願の一丁目一番地案件〟で、3代目代表・吉村知事が抱く意欲は強く深い。
3回目となる住民投票に向けた「第3次案」はこうだ。まず当初案の大阪市24区を特別区4つへの集約再編を見直しもう少し多くする。「大阪市廃止」の根本は変えず、AIなどデジタル化を進め新庁舎建設費用など出費を抑え効率的な行政運営を目指す。維新側の思惑では5月に府市合同の法定協議会を発足、秋に成案を示す。住民投票は、来年4月の統一地方選で府知事選・府議選と同時に、今度は大阪市単独ではなく府内全市町村で行う事を想定している。
「大阪市廃止」の賛否を府全域の投票で決めれば『賛成』が上回る可能性が高い。各種メディア調査でも大阪市民は「またか?」「何回やるの?」「勝つまでやる気?」と、ややうんざりも他の府民にとってメリットは大きいからだ。大阪市は一般会計だけで年額2兆2000億円の巨大予算があり、使い道が府に移り流動化すると他自治体は間違いなく潤う。一方で大阪市民からは「市の行方は市民で決める」との反発も予想され、国の大都市特別区設置法でも「当該市民のみの投票決定権」を定めている。
ここで物を言うのは維新が政府与党入りした点。大都市法を国会で改正し「大阪府の名称を大阪都に変える」住民投票を一緒にやってしまえば、大阪市民の反発など府全体で十分カバーでき「大阪市廃止」実現の可能性はグンと広がる。

3度目投票は範囲拡大
吉村知事は2度目住民投票否決の際「私の任期中に再び提案する事はない」と約束したが、彼には「日本発展のために首都圏一極集中ではなく、大阪がツインエンジンの一端にならないとダメ!」という強い信念がある。そのための東京都に匹敵する強力な自治体として『シン大阪都』を機能させる必要性を唱える。先の衆院選に併せ吉村知事と横山英幸大阪市長が突然辞任し出直し選に再出馬し再選、との分かりにくい過程を踏んだのも「大阪都構想再挑戦へ有権者の民意を得た」とのお墨付きがほしかったから。彼の認識ではソレを得たことになる。
当初目的だった〝二重行政解消〟のスローガンは既に後退し「東京都と肩を並べる大阪都誕生」が目的へと変化している。シン大阪都は大阪市を飲み込むだけではとどまらない。その時点では政令指定都市として唯一大阪に残る堺市もいずれ分割再編され特別区に。さらに府内の人口20万人以上中核市として位置付けられる7市(高槻、東大阪、豊中、枚方、八尾、寝屋川)も将来は再編され特別区候補へと挙がってくることになろう。
シン大阪都の限りない強大化は、維新が理想とした「道州制(中央集権から地域への権限分散)」実現に逆行する、という指摘がある。これに対し維新サイドは「国の中央集権に対抗する地域作りはバラバラでは戦えない。大阪都が将来〝関西州実現〟時の州都として機能するにはこれぐらいの力がなくてはダメだ」と反論している。
人気こそ「突破」の源泉
背景にあるのは、保守右派の理念と政治スタイルが酷似する高市総裁と吉村代表の強い親和性だ。トランプ氏を彷彿とさせる「既得権打破」の劇場型政治が共通項で、現状を徹底的に壊し、後戻り不能な改革を断行する構え。「選挙こそが民意の体現」という自負から、「私のやる事にNOなら、次の選挙で落とせばいい」と反対派を突き放し丁寧な対話を拒む。
危うい維新の一本足打法
行政府の政治家トップの独断専行をとどめるのは、いつの時代も二元代表制である立法府議会の役割。しかし、トランプ大統領、高市総理、吉村知事は「与党議員たちは私の個人的人気に乗って選ばれたチルドレン」という構図があり、議員は「待った!」を簡単には掛けられず、結果的に付き従うしかない。
維新の会は、かつて人気の橋下元知事をタフ・ネゴシエーター(凄腕交渉人)松井前府知事が支える絶妙コンビで発展した。今、仮に吉村知事が「都構想が実現できないのなら、私は政治家を辞める」と地位を投げ出したら、後継者不在で党自体が存亡の危機に陥りかねない。吉村人気で当選した府内の地方議員は、たちどころに職を失う危険性も。
一方の高市総理も国民的人気の大きさに比べ党内同志の基盤は極めて弱く、数少ない腹を割って話せる政治家の1人が吉村代表という図式だけに、衆院自民党が結党以来最大に膨らんでも、2人は車の両輪のようにさまざまな政策で協力し合う事を忘れない。結果としてこの気を逃さず「大阪都誕生」まで一気に駆け抜けそうだ。

