いじめ問題の根本的な解決と法整備を目指す一般社団法人「いじめ・ハラスメント被害保護者会 ヨリドコロの会」は4月18日、大阪市内でシンポジウム「そうだったのか!いじめ事件の真実と対策」を開く。自治体による迅速な介入でいじめの早期解決を図る「寝屋川モデル」で知られる大阪府寝屋川市の広瀬慶輔市長らが登壇し、実効性のある行政支援の在り方を議論する。

「寝屋川モデル」に寄せる全国の期待と法整備への願い
同会は広島を拠点に活動を全国へ広げ、現在は行政や議員、民間ネットワークと連携し、いじめ防止に向けた法改正や行政改革を働きかけている。中でも、被害当事者らが強い関心を寄せているのが、大阪府寝屋川市の広瀬慶輔市長による取り組みだ。
広瀬氏は市長就任後、市内で深刻ないじめ事案が目立たない中でも、街づくり政策の一環として「教育環境の整備」を掲げ、安心して学べる環境づくりを進めてきた。その柱となるのが、いじめの認知・発覚から原則1カ月での解消を目指す「寝屋川モデル」である。
同モデルは徐々に効果が認知され、2022年には旭川市、可児市、八尾市など独自の対策に取り組む自治体の首長が参加する「いじめ対策サミット」が開催された。その後も寝屋川市への視察は増え、北海道旭川市や埼玉県川口市では条例制定の動きが進むなど、取り組みは各地に広がっている。
さらに、こども家庭庁でも首長部局が学校外から関与する仕組みづくりの検討が進められるなど、「寝屋川モデル」は自治体にとどまらず国の政策にも影響を及ぼしつつある。いじめの早期解決を図る実効性の高い手法として、評価が高まっている。
寝屋川市も加盟する中核市市長会では、いじめ防止に向けた議論や各自治体の取り組み発表が活発化している。今年2月には、いじめを受けた当時中学2年生の生徒が自殺した事案があった北海道旭川市の今津市長が、「いじめ防止対策首長連合」を6月に発足させる方針を表明した。
こうした動きを受け、中核市を中心に、行政が主体的に関与するいじめ対策の枠組みは広がりを見せている。今後は国への発信力を一層強めていく方針で、自治体主導の取り組みは新たな段階に入りつつある。
「寝屋川モデル」は、学校や教育委員会が重視してきた〝人間関係の再構築〟を目指す教育的対応では解決が難しいケースに着目した仕組み。関係修復を図る過程においても、被害児童の人権が脅かされる状態が続く場合があることから、早期の解決を重視する。
いじめにより、子どもが半年から1年にわたり登校できない状況が続けば、学習や生活に大きな影響を及ぼし、心の傷が深まる恐れもある。このため同市では、被害の長期化を防ぐ観点から、迅速な対応を軸とした体制を整えている。
具体的には、「加害児童」「被害児童」といった用語を用い、人権問題として明確に位置付けるとともに、教育現場から切り離し、市の監察課が介入する仕組みを導入した。学校への相談だけでは解決に至らないケースや、発生件数の抑制を優先するあまり問題が見過ごされるといった指摘がある中で、行政が主体的に関与するスピード感ある対応が特徴だ。
同会理事の竹原直子氏は、いじめに加え、近年は不登校の問題も深刻化していると指摘する。その上で「学校や教員、教育委員会を否定するものではないが、まずは国レベルでの法整備を強く望んでいる」と話す。さらに「それが難しい場合には、自治体による条例化を通じて、寝屋川市のような手厚い行政支援を全国に広げてほしい」と訴え、教育関係者や議員、市民に対しシンポジウムへの参加を呼びかける。
広瀬慶輔市長との対話を通じ、教育現場だけに任せず、行政が主体的に介入していじめを止める仕組みが必要だと強調。法改正が実現するまでの間、子どもを守る現実的な方策になるとの認識を示した。

「あの日、もっと真剣に……」被害者の後悔を教育現場へ
教育関係者にこそ知ってほしい深刻な実態がある。広島県尾道市で起きた「給食いじめ」では、低身長症の女子児童が執拗な被害を受け、適応障害と診断された。
母親は当初、あえて「いじめ」という言葉を使わず、学校に対して繰り返し子どもの訴えを伝えていたが、「状況は全く改善しなかった」と振り返る。被害者の声を早期に、かつ深刻に受け止める重要性が浮き彫りとなった事例だ。この母親は現在、同会の理事も務めている。
被害に直面した際、どこに相談すべきか分からず悩むケースも少なくない。自治体ごとに対応が異なる現状は、当事者になって初めて認識されることが多く、安心して暮らせる環境が十分に整っているとは言い難い。シンポジウムでは、こうした課題についても共有し、改善の必要性を訴える。

弁護士ら専門家が拓く「三権分立」による解決
いじめ問題が長期化、複雑化する要因の一つとして、学校と保護者の閉ざされた関係が指摘されている。これに対し同会は、教育機関、行政機関、保護者会がそれぞれの立場で役割を担う「三権分立」の構築を提唱する。
シンポジウムには、同会の顧問弁護士による録画映像のほか、名古屋大学大学院博士課程でいじめを専門に研究する元教員ら専門家が参加する予定だ。単なる相談にとどまらず、「法に基づき正しいことを貫く」との理念のもと、客観的な分析と人権保護の観点から解決を後押しする役割が期待される。学校への第三者機関の設置など、具体的な制度改革についても議論が交わされる見通しだ。
同会は、苦境にある全国の親子が一日も早く苦しみから抜け出せるよう、教育関係者や行政、市民が連携し、支え合う〝ヨリドコロ(拠り所)〟となることを目指している。
開催時間は午後1時から午後5時まで。会場は「アットビジネスセンターPREMIUM新大阪」(大阪市淀川区)で、オンライン配信も行う。参加費は1000円。


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