地域

どうして皆、「箕面」で暮らしたくなるのか?

「街の住みここちランキング」などで上位を常にキープする箕面市。理由は、「子育てのしやすさ」、そして、「想像以上の利便性」と「街への期待感」ではないか。今回、「子育て環境」と「街の将来性」に着目した。(礒見愛香、植田佑玖)

箕面萱野駅とみのおキューズモール新棟
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圧倒的な子育てのしやすさ

 「子育て・教育日本一」を掲げる箕面市では、先進的な子育て支援と教育環境の整備に力を入れており、子育て世帯にとって魅力的な街づくりを進めている。

未就学児に特化した支援策

 同市では、子育て中の保護者の不安を解消するための支援策が充実。今年度から「ぴよぴよサポート事業」がスタートし、初回無料(2回目以降も格安)で育児ヘルパーを派遣するサービスの提供を開始。同年度から始まる「見守りおむつ定期便事業」では、子育て経験のある見守り配達員が毎月訪問し、おむつなどの支給品を届けながら子育て相談にも応じている。
 在宅で子育て中の保護者が気軽に集える「場・機会」を創出しているのも特徴だ。保育士が公民館や図書館など市内各所に出張し、子育て親子の交流の場を開催する「おひさまひろば」や、公共施設のキッズコーナーで育児相談ができる「おひさまDay」を定期的に開催。2021年度からは市内公園の幼児向け遊具の設置も開始。同世代の子どもを持つ親同士のコミュニティー形成を促進し、孤立しがちな子育て世帯をサポートする取り組みが広がっている。さらに、スマートフォンで使える「みのお子育てアプリ」を活用した情報発信により、いつでも必要な支援にアクセスできる環境を整えている。

待機児童問題にもいち早く取り組む

 箕面市は待機児童問題にも熱心に取り組む。市内民間保育園等に新たに就職する保育士や、保育士として働く意志のある学生を対象として補助金を交付する「保育士確保対策支援事業」を15年から開始。新設の保育施設だけでなく既存保育施設の定員拡大も促進したことにより、19年度から22年度まで保育所待機児童数ゼロを記録した。現在も待機児童解消のため、朝夕に1、2歳児の保育を行う「森町保育送迎ステーション」を、24年4月から箕面森町地域に開設している。

将来を見据えた教育環境

 小中一貫教育を推進しているのも同市ならでは。幼児期から小学校、そして中学校までの一貫した視点での教育により、いわゆる「小1プロブレム」や「中1ギャップ」といった課題に対応。子どもの発達段階に応じた切れ目のない教育支援は、将来を見据えた子育て計画を立てる上での安心材料となる。
 また同市独自で、学力や英語能力、体力・運動能力、生活状況を調査する「箕面子どもステップアップ調査」を実施。この調査により、子ども一人一人の学力・体力・生活の状況を継続的に把握し、きめ細やかな指導に生かしている。特に体力向上への取り組みでは、市内統一の9年間カリキュラムに基づいた体育科授業や、保育所・幼稚園との連携を通じて、子どもたちの運動習慣づくりを支援している。
 充実した教育環境での結果は、データでも如実に表れている。(表1)「令和6年度全国学力・学習状況調査」では、小・中学生ともに全ての教科で全国及び府内平均を12年連続で上回っている。特に中学生は全教科で全国トップを記録した。

2025年1月箕面市広報紙「もみじだより」より
安全対策も万全

 安全施策も充実している。子どもの安全のために見守りシステム「otta(オッタ)」を導入し、市立小中学校の全児童生徒(約1万2600人)に見守り端末を無償で配付している。この端末を持つ子どもが市内約700カ所の見守りスポットを通ると、位置情報や通過時刻が記録されるという仕組みだ。これにより、迷子や行方不明などの緊急時に迅速な対応が可能になる。
 さらに、14年度から通学路や公園に約2000台の防犯カメラを設置。そのうち市で設置した1140台は、24年度以降から6年間で全て、迅速な映像取得・確認が可能なものに更新する予定だ。プライバシーや肖像権にも配慮し、記録映像は1週間で削除、また捜査時のみの使用に限定する。さらに自治会が設置する防犯カメラへの補助制度も拡充される予定で、地域全体での見守り体制の強化を図っている。

街を歩くと、防犯カメラが多く設置されていることがわかる
利便性と豊かな環境の両立

 箕面船場阪大前駅を中心に広がる住環境は、子育て世帯にとって理想的だ。駅周辺には文化施設が集まり、隣駅の箕面萱野駅には「みのおキューズモール」、千里中央駅には塾や習い事など教育関連施設が集まる。子どもの成長に合わせた学びの場が近くにあり、大阪都心へのダイレクトアクセスと豊かな自然環境を併せ持つ立地により、家族のライフスタイルに合わせた柔軟な生活設計ができる。

新駅開業から1年 これからの箕面市

 箕面船場地区は1967年に造成が始まり、大阪万博が開催された70年に「街開き」が行われた。万博に向けて周辺道路の整備が進み、大阪国際(伊丹)空港や新大阪駅にもアクセスしやすくなり、この地区は発展していった。時を経て、新たに大阪で万博が開催されるこの時期に、この地区は再度生まれ変わろうとしている。

箕面船場阪大前駅周辺の様子
新駅開業の効果

 24年の北大阪急行電鉄延伸、箕面萱野駅と箕面船場阪大前駅の開業、そして駅前開発は多くの人の心を躍らせた。箕面萱野駅では「みのおキューズモールSTATION棟」のオープン、箕面船場阪大前駅では「東京建物 Brillia HALL 箕面(新名称:5月1日から)」、「大阪大学箕面キャンパス」や大学図書館と一体化した「箕面市立船場図書館」の新設が続いた。さらに今後、「箕面市立病院」が船場東地区のCOM1号館跡地に移転・建て替えされ、新たな診療科の設置や全室個室化など、市民に提供される医療の質がさらに上がることが予測できる。箕面船場エリアの中心であった「COM ART HILL(コムアートヒル:大阪船場繊維卸商団地協同組合)」でも「共生」をテーマに街づくりが検討されており、歩道・街路樹の整備や「ノンカーボン都市」を目指している。

箕面市全体と北摂エリアのアップデート

 箕面市の開発は箕面船場・箕面萱野にとどまらない。市民が注目する開発の一つが「川合・山之口地区」だ。大阪モノレールの延伸と新駅設置、そして周辺地区の街づくりが計画されている。幹線道路に面した立地を生かして、大型商業施設や物流施設を核とした整備が計画されており、イメージパースの絵から「コストコができるのではないか」と推測する声が市民から上がっている。現在の計画では26年度の商業施設開業、27年度の区画整理完了を目指している。
 また、大阪大学箕面キャンパス移転前跡地(粟生間谷東八丁目)では、公園・公共緑地が設けられ、建物部分は学校施設・商業施設・データセンター(2棟)・交流会館が建設される予定。特にデータセンターについては、2棟合計で15万平方㍍超の超大型データセンターが整備されるのではないかと予測されている。また、学校施設はインターナショナルスクールが開校する予定だ。
 さらに北摂全域に広げてみると、他エリアでも「街の作り替え」が進んでいる。まず豊中市の千里中央エリアでは、千里阪急・セルシー敷地で千里阪急が入居する大規模商業施設(延床面積10万平方㍍級)の新設計画が進む。また、「セルシー広場」を継承する〝にぎわい広場〟の整備や千里中央駅から千里東町公園につながる歩行者ネットワークのバリアフリー化を目指すという。
 吹田市の万博記念公園エリアでは、駅前に商業施設やホテル、西日本最大級のアリーナを建設する事業計画が進んでいる。アリーナは最大収容人数約1万8000人と大阪城ホールを上回る規模で、国内最大のさいたまスーパーアリーナに次ぐキャパシティーを誇る。「都市開発」といえば大阪市内も活発だが、北摂エリアも負けじと発展を続けており、広大な土地を生かしてダイナミックな「街まるごと」の開発が進んでいる。

川合・山之口地区地区開発イメージパース(2023年3月 箕面市)
箕面市立船場図書館と箕面市船場生涯学習センター 
万博記念公園駅前 開発イメージ(2023年9月 三菱商事都市開発)
「大規模開発」がもたらす街への好影響

 大規模施設やマンションが建つことで人の流れが変わり、それにあわせて周辺地域も充実し、街全体の魅力が高まることが期待できる。
 たとえば都島区では、2000年代以降に大型マンションの供給が立て続けにあり、それによって人口が急増。大型マンションが集まるエリアが校区となる友渕小学校は、今や分校もあわせて児童数が1502名(24年4月時点)のマンモス校だ。子どもの増加に伴って、ニーズに沿うように習い事や塾といった教育施設もそろってきた。また、飲食店、フィットネス、美容室など生活に密接した店舗も次々と集まり、今では「激戦区」となるほど充実した街になっている。
 大阪府外に目を向けると、JR尼崎駅周辺エリアもいい例だろう。昭和後期までは工業地帯だったが、工場が閉鎖し、その跡地開発として「あまがさき緑遊新都心」が策定された。商業施設「COCOE(現在の「あまがさきキューズモール」)」や、分譲マンション、病院、大学などが次々と新設された。現在は利便性の高い住宅地として認知されるようになり、「ARUHI presents 本当に住みやすい街大賞2018in関西」では1位にもなっている。
 都市部と比べると「何もない」と思われてきたエリアでも、人の流れを大きく増やし、生活が豊かになることが期待できる開発であれば、住居エリアとしての需要も当然高まる。その期待に応えるように生活に密接する店舗・商業施設も充実していき、街は発展していくだろう。市内と比べると、一見駅前以外は〝何もない〟ように見える「箕面船場」も、今後大型マンションの供給により前述の事例と同様の道を歩むことが予想できる。

千里阪急ホテル敷地周辺 開発イメージ(2024年8月 阪急阪神不動産)

魅力的な店が集中する箕面船場周辺

 森の中の隠れ家のような空間で、時間がゆったりと流れるような「ノイカフェ 箕面船場本店」(箕面市船場西3)。定番の自家製ケーキのほか、ピザにパスタ、カシミールカレーなどメニューが豊富。モーニング、ランチ、カフェ、ディナーと、どの時間帯でも楽しめる。

ノイカフェ

 1950~60年代のデンマークを中心に、北欧ヴィンテージ家具を自社で輸入し、修理、販売を行う「北の椅子と」(同市船場東2)。箕面店では張り替え工房を併設しており、お店で買ったもの以外の椅子も張り替え可能。インテリアの相談をトータルでできるため心強い。

「北の椅子と」の外観

 天然温泉の露天風呂や炭酸泉など多彩な浴槽を備え、岩盤浴、サウナ、リラクゼーションや食事処も併設した「箕面湯元水春」(同市船場東3)。温泉「箕面美人の湯」は、大阪箕面の地下1200㍍から湧き出る天然温泉で、泉質も優れている。

水春の露天風呂

 箕面船場駅から徒歩3分圏内にある、レトロな英国風喫茶店「カフェ・ド・モナムール」(同市船場東3)。店内はアンティークにあふれたこだわりの内装。ショーケースにはハンドメイドケーキがずらりと並び、選びきれないほどのコーヒー豆と紅茶葉の種類がそろう。

モナムールの店内