不動産所有者の住所変更登記 来年4月から義務化 申請怠れば5万円以下の過料も

 所有者不明土地の解消対策として、不動産登記制度の見直しが行われ「相続登記の義務化」は2024年4月からスタートしている。26年4月1日、新たに「住所変更登記の義務化」が施行される。

不動産の所有者に対して、住所変更日から2年以内に申請することを義務付ける「住所変更登記の義務化」が26年4月から施行される
不動産の所有者に対して、住所変更日から2年以内に申請することを義務付ける「住所変更登記の義務化」が26年4月から施行される

 不動産の所有者に対して、住所変更日から2年以内に申請することを義務付けるというもの。2年間の猶予期間があるが、施行前の住所変更でも、未登記であれば対象となる。さらに、遺言の有効性争いや、重病であるなど「正当な理由」がなく申請を怠った場合には、5万円以下の過料が科せられることがある。

登記官の職権で登記行う制度導入

 同時に、所有者の負担軽減のため、変更登記の申請をしなくても、登記官の職権で登記を行う新たな方策が導入される。所有者が氏名や住所、メールアドレスなどの情報を申し出た場合、登記官がその情報を住民基本台帳ネットワークシステム(以下、住基ネット)に照会。所有者に対して、住所等変更登記の確認を取ったうえで、職権で変更登記するという仕組みだ。鈴木馨祐(けいすけ)法務大臣は、1月10日の閣議後記者会見で「検索用情報の申出を済ませておけば、住所等変更登記の義務違反に問われることがなくなるという便利な制度(原文ママ)」と述べている。申し出を可能とする改正省令が同日公布され、今年の4月21日から施行される。
 では、「住所変更登記の義務化」自体、一般認知されているのか。法務省が昨年9月に行った調査では「聞いたことがある」と答えた人は31%、職権で住所等変更登記をする仕組みが導入されることを「聞いたことがある」と答えた人は、20%と認知度は低い。担当者は「これまで『相続登記の義務化』の周知を重点に置いており、ある程度浸透したという実感はある。当制度についてもウェブサイトや各団体と連携して告知を行っていく予定」と話す。

名義人の死亡情報符号も新設

 「住所変更登記の義務化」と同時に、登記簿に所有権者の死亡を符号によって確認することができる制度も新設される。現行では、名義人が死亡しても相続登記などがなされていない場合、死亡した事実が登記簿に公示されない。このため、公共事業や民間取引が疎外されることがあった。同制度では、登記官が住基ネットから死亡情報を取得して、登記に符号を表示することで、登記を見れば分かるようになる。
 22年の地籍調査で所有者不明土地は24%と、九州本島の大きさに匹敵するともいわれる中、これら新制度がすぐに解決策となるわけではないが、一歩進んだことには違いない。