国道1号と京阪守口市駅を結ぶ都市計画道路「豊秀松月線」の改良工事が進んでいる。現在、歩道の整備と共に無電柱化に向けた工事の段階で、来年7月には一部区間で広い歩道を備えた道路がおおむね出来上がる予定だ。
事業区間は京阪守口市駅付近から国道1号までの約260㍍。幅員は11㍍から22㍍に広げられ、電線の地中化に向けた工事も進む。市企画財政部まちづくり戦略課の川見隆史課長代理は「(一部区間について)来年7月にはいったんハード面の整備が完了し、両側に7㍍ずつの広い歩道を備えた道に生まれ変わる」という。
拡幅の目的は、同市中心部を貫く幹線として歩行者などの安全性の向上を図るとともに、近年取り組みが加速する〝ウォーカブル〟という歩行者優先のまちづくりだ。同じ動きは府内各地にも見られ、例えば、道頓堀周辺では御堂筋の側道を潰して歩道を広く取ったり、難波駅前ではタクシーなどが乗り入れるロータリーを広場に作り替え、車中心から〝人中心〟の街路空間に生まれ変わった。
同市も同様に、昨年3月に策定された「守口市駅北側エリアリノベーション戦略」で、エリアの価値向上やにぎわいづくりに向け、豊秀松月線と文禄堤周辺のウォーカブルなまちづくりを進めている。豊秀松月線を南北軸に、文禄堤を東西軸に位置づけ、市の魅力に出合える公共空間として整備するという。
道路活用の協議進む
豊秀松月線は現在、通勤通学以外に通りを歩く住民はまばら。沿道のにぎわいの可能性を探るため、21年11月には「守口さんぽ」と題した社会実験が行われた。守口郵便局前にはオープンカフェが設けられ、タワーマンションの文禄ヒルズ付近にはキッチンカーなどが出店した。
社会実験には週末を含め、5日間で約5100人が来場。20~30代の若い家族連れも多く訪れ、「このエリアがにぎわいのポテンシャルを秘めていることが証明された」と市企画財政部まちづくり戦略課の酒田宗利課長は話す。
また、沿道も含め、にぎわいを生み出せる具体的な道路活用については、これまでも地元の飲食店や金融機関など13社と市で組織する『守口市駅北側エリアプラットフォーム』などで議論を重ねてきた。沿道でマルシェやオープンカフェを行うなどの案が示される中、酒田課長は「1本路地に入れば、地元の名店が多数ある。こうした魅力も一体的に引き出せれば」と期待している。
文禄堤との調和
豊秀松月線が新たな南北軸として整備される一方、同市の貴重な歴史文化遺産としてエリアを東西に走る文禄堤。東海道五十七次の最後の宿場「守口宿」のあった道だ。
計画では、守口市駅付近で豊秀松月線の頭上に架かる本町橋の架け替えが予定されている。橋は京街道の一部だが、1952(昭和27)年に造られた古いコンクリート製で老朽化が進んでいる。新しい橋は長さを倍にし、豊秀松月線からのアクセスもしやすくする予定という。
また、文禄堤にある「旧徳永家住宅」もリノベーション戦略の核の一つとして改装工事が進んでいる。往時の面影を今に残す歴史的な家屋はそのままに、民間のレストランや貸し農園などとして利用される予定だ。市企画財政部企画課の仲嶋浩平課長によると、「現在、建物の改装に着手しており、来年4月以降の順次オープンを目指している」という。
同市の新たなシンボルストリートとして整備が進む豊秀松月線。仲嶋課長は「これまで以上に駅北側の回遊性を高め、にぎわいを生み出せれば」と話している。