地震に台風、ゲリラ豪雨… 相次ぐ自然災害に、防災グッズ続々

 地震、台風、ゲリラ豪雨など相次ぐ災害。いつ起こるか分からない災害に備える防災グッズが数々生み出されている。

関東45%が「準備している」 近畿は38%とやや低い

緩衝材の「プチプチ」 防寒服として活躍

 梱包資材メーカーの川上産業(名古屋市)は「プチプチ」で知られる緩衝材を用いた防災用品を開発している。
 一つめは「プチ寝袋」だ。緩衝材の空気層には保温効果があるため、停電などで暖房が使えないときに身体を冷えにくくする役割を果たす。軽量なため、スペースを取らず備蓄することができる。
 二つめは、簡易ベッドだ。「プチプチ」を板にしたことで、変形しにくく耐荷重は400㌔㌘までと剛性が高い上、軽量であることが特長だ。
 ポリオレフィンという、ボールペンのキャップや米袋などに使用される素材のため、水にも強く、アルコール除菌しても劣化しにくい。また、完全燃焼しても有料ガスは発生しない。
 担当の山本未弥さんは「プチプチは、着用すれば防寒着、貼れば断熱材、敷けば敷布団とさまざまな活用法がある。有事の際に少しでも快適に快適なればという思いで提供している」と話す。

簡易ベッドは折り畳み式、組み立て式など3タイプ
簡易ベッドは折り畳み式、組み立て式など3タイプ

災害時のトイレ開発

 船舶の軸受けやエレベーターのブレーキなど技術開発を行うスターライト工業(大阪市旭区)は、神戸市との共同開発を機に、災害時に活用できるトイレを提供している。
 一般向けには「クイックトイレ」という携帯用商品を販売している。
 米ぬかでできた排便袋を便器にセットし、使用後、ホタテの貝殻を用いた凝固剤を投入すると約5秒で固まり、捨てることができるというもの。米ぬかとホタテ、それぞれに消臭、抗菌効果があり、排泄後の汚物から広がる感染症防止にもつながる。
 一方、自治体や企業向けには、隙間を無くしたり使用中かどうか分かるよう、防犯面を配慮した災害用トイレ「クイックハウス」を開発した。
 オプションで換気・脱臭センサーファンやセンサーライトを取り付けることができるようにしている。また、トイレ提供者が長期間備蓄しやすいように設計し、便器、ブースとも簡単に組み立てられるなど災害発生後すぐに活用できるよう考慮している。
 西郷隆志社長は「災害時にも少しでもトイレ環境を整えられるよう、改良を重ねて提供していきたい」と意気込む。

焦った状況下でもスムーズに使用できるよう、イラストを用いた説明書きが同封されている
焦った状況下でもスムーズに使用できるよう、イラストを用いた説明書きが同封されている

水がなくても歯磨き可能

 水がなくても使用できる「無水歯ブラシ」を提供するのはヤマトエスロン(八尾市)。オーラルケア製品のトップメーカーとして90年以上生産してきたノウハウを生かし、歯ブラシ、フロス、歯磨きシートがセットになった同製品を2024年3月から提供している。「歯磨きは、水が貴重な環境下では後回しにされやすい。そんな中でもケアすることができる」と担当の柳瀬修平さんは言う。

水がなくても使用できる「無水歯ブラシ」
水がなくても使用できる「無水歯ブラシ」

6割が「防災用品準備していない」

 農林中央金庫(東京都千代田区)が4月30日に発表した「災害への備えと食に関する調査」では、回答者3500人のうち、「防災グッズを準備していない」と答えた割合は6割であることが分かった。地域別では「準備している」と回答した人が、関東圏で45・3%だったのに対して、近畿圏では38・1%とやや低かった。
 いつ起こるか分からない災害に対して、飲料、食料以外のこれらの用品も備蓄しておく必要があるのではないだろうか。

1月1日 能登半島地震
 マグニチュード7.6、最大震度7を観測。石川県と新潟県、富山県で災害関連死も含めてあわせて400人以上が亡くなった。石川県内の住宅被害は9万1000棟。全壊と半壊は計2万5000棟あまりに上っている。

4月17日 豊後水道地震
 マグニチュード6.6、愛媛・高知の2県で震度6弱以上の揺れを観測。宮崎県日南市では最大震度6弱を観測した。愛媛、高知、大分、広島の4県で16人が負傷した(内閣府4月25日現在)。

8月8日 日向灘地震
 九州南部の日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生。宮崎県日南市では最大震度6弱を観測した。負傷者は宮崎、熊本、鹿児島3県で16人、住宅被害は80棟に及んだ(内閣府8月15日現在)。

9月21日 能登半島豪雨
 線状降水帯などの影響で、石川県の多いところでは20日から22日までの総降水量が500 ㍉を超え記録的な大雨となった。この豪雨で同県では死者15人、住宅被害は床上浸水253棟、床下浸水1056棟など1818棟(内閣府11月1日現在)。