〝ほったらかし〟で料理ができる自動調理鍋の売れ行きが好調だ。鍋に食材を入れ、ボタンを押すだけで手軽に調理してくれるキッチン家電。子育て世帯や、仕事が忙しくて家事を時短したい人、料理に慣れていない人の〝お助け家電〟としてじわじわ認知され、この10年でもっとも躍進した家電の一つに。家電メーカーの参入が相次いで新機能も充実し、価格帯も幅広くなった。自動調理鍋の今を探る。
多機能でレシピ充実 空き時間で他のことも
自動調理鍋の最大のメリットは火を使う調理とは違い、〝ほったらかし〟で調理できる点だ。子育て世帯にとっては、その間に子どもを迎えに行ったり、他の家事ができたり、もう一品追加したりできる。また、料理が苦手な人にとっては、 食材をレシピ通りに入れてボタンを押すだけなので、失敗なく仕上げられる。
自動調理鍋には煮る、焼く、蒸す、揚げる、低温で調理するなどさまざまな機能があり、カレーや肉じゃが、シチュー、パスタやスイーツなども手軽だ。
圧力調理ができる商品もある。豚の角煮など煮込み料理など、電気なので鍋のそばにいなくても安全だ。
また、予約調理機能があるのも通常の鍋と違う大きなメリット。例えば、朝に材料を鍋に入れ、夕方にでき上がるようにセットしておけば、帰宅してすぐアツアツの料理が食べられる夢のような家電なのだ。また、保温機能付きなら、あたたかい料理をいつでも食べられるのも魅力だ。
多彩な機能を搭載し競争激化
自動調理鍋の黎明期にいち早く商品を世に出したのがシャープの「ヘルシオ ホットクック」で、2015年に初代モデルが発売された。無水調理によるおいしさと健康訴求でシェアを伸ばした。加熱の進行に合わせた「かきまぜ機能」も搭載し、食材の中までしっかり味がしみこみ、ムラを抑えておいしく仕上げる。負荷・温度・蒸気のトリプルセンサーを搭載し、鍋の中の温度をきめ細かく調整するので、食材の量は適当でも失敗知らずなのもうれしい機能となっている。
その他にも各メーカーが特徴を持つ商品を続々と発売している。
パナソニックの 「オートクッカー ビストロ」の最新機種の特徴は、独自の「鍋底かきまぜ」で、鍋底をさらうように羽根が回転。メニューに応じて速さや向きも変える。最高約2気圧の高圧調理に対応するほか、業界最高の1285㍗の「高火力」×「鍋底かきまぜ」で炒めものを約10分でシャキッと仕上げる。
アイリスオーヤマの「シェフドラム」は、本体が傾いて鍋ごと回転しながら加熱する「ムラなしかくはん」が特徴。かくはんすることで味も染み込みやすくなるほか、唐揚げも少ない油でできる。さらに、ふた付きなので油はねの心配がなく、子どもが小さくて敬遠しがちだった揚げ物も安心してできる。
これら高機能タイプの価格帯は「ヘルシオ ホットクック」「シェフドラム」が3~4万円台、「オートクッカー ビストロ」が7万円前後となっている。
以上のような、高付加価値機種に対し、自動かき混ぜ機能を搭載していない機種なら、1万円台から購入できる商品も続々発売されている。定番の豚の角煮やカレー、ちょっとした煮物などを調理するには、低価格モデルでも機能としては十分だ。
炊飯器のように一家に1台の時代も
自動調理鍋の市場規模は、年100万台を突破したと推測されている。炊飯器の 年間出荷台数は約500~600万台で、炊飯器の5分の1の規模であることを考えると、自動調 理鍋の市場はまだまだ成長が予測される。
新技術が導入されることや、消費者のライフスタ イルの変化に伴い、今後もさらに認知が広がれば、いつか炊飯器のように一家に1台の日が来るかもしれない。今なら家電レンタル会社を利用すれば、自動調理鍋も手軽に借りられるので、まずはレンタルから始めてみるのも手だ。