政府 輸入小麦価格を据え置き 家計に配慮も効果はイマイチ


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 昨年夏の干ばつで米国やカナダ産小麦が不作で、小麦の国際価格は高水準で推移していた。それに加えてロシアによる世界有数の小麦輸出国、ウクライナへの侵攻で小麦相場は急騰。こうした中、政府は輸入小麦の売り渡し価格を当面、据え置く方針を固めた。価格の抑制策をとるのは14年ぶりだ。ただ、農林水産省が3月に示した試算では小麦の価格が消費者物価指数に与える影響は0・1%にも満たない。他の原料も高騰しており、効果は限定的だ。

小麦価格、政府が決める
国内需要の85%海外に依存

 農林水産省は、2022年10月の改定で、売り渡し価格は4月より2割程度上昇すると試算。現行制度での最高値だった08年10月の1t当たり7万6030円を更新するとみていた。

 ロシアによるウクライナ侵攻を背景に、エネルギーや食料価格の高騰が続く中、政府は8月15日、総理大臣官邸で「物価・賃金・生活総合対策本部」を開き、政府が製粉会社などに売り渡す価格を当面、据え置くための具体策を早急に検討するよう、農林水産省に指示した。

 そもそも小麦価格はどのように決まっているのか。

 小麦はパンや麺類など多くの食品の原料となる。品質の良い小麦を大量に安定供給するため、国家貿易として政府が商社を通して一括して買い付け、製粉会社に売り渡している。その売り渡し価格は毎年4月と10月に改定している。

 政府が小麦を買い付けるようになったのは終戦後で小麦の国際市況を反映した現行制度が始まったのは07年4月。海上運賃や為替動向も含めた直近6カ月間の平均買い付け価格に、国産小麦の生産振興費などを上乗せして決める仕組みだ。

 日本は小麦需要の85%を海外に依存している。16~20年度の平均年間流通量を見ると、国産82万tに対し、輸入は488万t。このうち米国が49・8%と最大で、カナダ33・4%、オーストラリア16・8%と3カ国が大半を占める。

 政府は家計に配慮し、食料・エネルギーに重点的に財政支出を行っている。ただ、農水省によると、小麦関連製品の小売価格に占める原料小麦の割合は、食パンで8%、外食のうどんや中華そばで1%にすぎない。調理のための電気やガス、食用油など他の原料も高騰しており、政府の小麦価格の抑制策についてエコノミストからは「対症療法に過ぎない。物価高に耐えられる賃上げ環境づくりが重要」との声も聞かれる。