「密室」のトラブル防げ 鉄道車内に防犯カメラ設置へ

「密室」のトラブル防げ 鉄道車内に防犯カメラ設置へ

 列車内の「密室」で乗客が襲われる事件が相次いでいることから、鉄道各社が車内に通信機能を持つなどの防犯カメラの設置を進めている。大阪でも7月23日にJR関西空港線の車内で、切りつけ事件が起きたばかり。国土交通省は東京、大阪、名古屋の三大都市圏を中心に、利用者の多い在来線と新幹線の全路線にカメラの設置を義務付ける方針で、9月にも省令を改正する意向だ。

10月以降の鉄道新車両に防犯カメラ 「密室」の事件 迅速に対応

〝抑止力〟にも

 2021年8月に小田急線、同10月に京王線で乗客が襲われた。この事件を受け、京急電鉄は自動で異常を把握できるシステムが必要と、事件後に中継機能付きのカメラを導入。今年度中に全車両に整備される。

 大阪でも7月23日、JR関西空港線が泉佐野市内の日根野―りんくうタウン駅間を走行中、乗客ら3人がナイフで切り付けられる事件が起きている。

 国土交通省は小田急線、京王線の両事件を受け、有識者による検討会を立ち上げ、車内カメラ設置の義務化を含めた対策を議論してきた。義務化の対象は新幹線全線と三大都市圏の路線に導入される新規車両が中心。9月にも改正の見通しという。

 密室の車内は車掌の目が届きにくい。犯罪を防ぐため〝防犯カメラ〟が目となり、異変を外部と共有することで、乗客を守ることが可能になる。「事件発生後の捜査だけでなく、抑止力にも役立つ。ハード面の対策に加え、事件発生時の連絡方法や対応を確認することが重要となる」(専門家)

車内防犯カメラの設置イメージ
車内防犯カメラの設置イメージ

設置急ぐ鉄道各社

 すでに関西の鉄道各社では防犯カメラの設置が進む。阪急電鉄と阪神電鉄は8月以降、全車両(全1682両)に通信機能を備えたカメラを設置する。映像や音声は、運行管理を行う指令所で常時共有。阪急は27年度末までに、阪神は25年4月の万博開幕までに実施する。阪急は「車内の映像と音声をリアルタイムで確認でき、トラブル発生の際に迅速に対応できる」としている。

 近畿日本鉄道も7月から通信機能付きカメラを設置し始め、28年度までに全車両(約1900両)に配備する。同社は、一部の特急車両に防犯カメラを導入していたが、対象を全車両に拡大。24年4月以降は、カメラ映像や音声を運転指令などが遠隔で確認できるシステムの運用も始める。緊急時に乗務員と通話ができる非常通話装置も1両あたり2台に増設する。

 JR西日本はAI搭載カメラを開発中で、異変を素早く把握できる仕組みの導入を急ぐ。27年度末までに京阪神エリアの全ての在来線車両に防犯カメラを設置する計画で、すでに約7割の設置を完了した。新快速列車は23年度末までに、特急列車には24年度末までに完了させる。

「密室」のトラブル防げ 鉄道車内に防犯カメラ設置へ

 南海電鉄は7月15日から通勤列車に防犯カメラの導入を始めた。23年度末までに保有する全車両の約2割に配備。28年度末までに全車両設置を目指す。

 大阪メトロは27年度末までに全路線の全220車両に設置する。京阪電気鉄道も一部で防犯カメラを導入しており、今後も車両の新造や更新に合わせて順次増やす方針という。

 国土交通省も7月11日から鉄道車両の防犯カメラ設置義務化についてパブリックコメント(意見公募)を開始した。期間は8月10日まで。同省は結果を踏まえた上で9月、義務化に必要な省令改正を目指す。

関西の鉄道会社の防犯カメラ設置計画