大阪国際大学と週刊大阪日日新聞が協働し、大学生たちが新聞記者の仕事を実践する「PBL演習Ⅲ」(担当教員:尾添侑太講師)を同大学で実施した。学生20人が7グループに分かれ、自分たちで見つけたテーマについて、人と会って取材し、記事を作成した。新聞離れが顕著な大学生に新聞に興味を持ってもらうとともに、活動を通して学内外のさまざまな人たちとコミュニケーションを図り、自分の意思を形成することを学んでもらう事が狙い。
本紙「わかるニュース」でおなじみの畑山博史論説委員のもと、学生たちはアポの取り方、質問の作り方、実施の取材、記事の書き方などで試行錯誤を重ね、それぞれ1本の記事を仕上げた。今回は、進化するバーチャルの世界から『「Vライバー」は職業として成り立つ?』と、少子化にも影響のある『「孤育て」に支援の手~子育てママ憩いの場に』の二つを紹介する。
「Vライバー」は職業として成り立つ?
バーチャル未来って明るい
リアルな自分自身を映像に登場させず、キャラクターやアバターを介して配信活動を行う人をV(バーチャル)ライバーと呼ぶ。ピンと来ない方でも、昨年大晦日の「NHK紅白歌合戦」に史上初の3Dバーチャルで初出場したエンターテインメントユニット「すとぷり」の事を覚えておられる方もおられるだろう。
人気があった女性の元Vライバーは、約3年で総額3億7000万円のスーパーチャット(投げ銭)を稼いだ。今やスーパーチャット額ランクはVライバーの独壇場となっている。このような話を聞くと「Vライバーになったら稼げる!」と思ってしまうだろうが、実際に職業として成立するのだろうか? 「ミライクリエイティブ」「Vision Jam Project」2社の協力で企業視点からその可能性を考えた。
まず「ミライクリエイティブ」の西村優さん、Vライバーの那亜羅さんと甜頓蓮さんにネット経由でお話しを伺った。
同社は元々プログラミングスクールを運営しており、スクールに通う子供たちの「将来の夢」を問うと、Vライバーやユーチューバー、イラストレーターといった令和の時代に通じる職業を通じる答えた。しかし、心配した親から「実績が少ないし怪しく、不安定」と言われ引き留められたという。「後に続く者がそんな理由で諦めるのが一番かわいそう」と、Vライバーを身近な職業にする為にバーチャル業界への進出を決意したそうだ。
続いて「今後の予想」を聞いてみた。すると「誰もが自身のアバターをもち、出社したりする世界になる」と話す。現在の40代以上世代は嫌悪感や無関心の人が大半を占める。しかし若者世代は偏見を持つ人が少なく、次第に誰もがVライバーの存在に「疑問を抱かなくなる」と予想する。今後は世界中に間違いなくバーチャルが広がり続ける。アバターを使用することで年齢性別に関わらず〝素の自分〟のままで多様な人と関わることができる。ライバーなど 〝人前に出る職業〟へのハードルは劇的に下がる。コミュニティ拡大によるVライバーの未来は明るいと言えそうだ。
次に合同会社「Vision Jam Project」中村歩夢さんをインタビューした。同社は元々eスポーツ業界で活動していた。数年前は現在よりハードルも低く、まずマスコット的なアバターを広報担当として起用する事を目的としてこの業界に参入したそうだ。
同様に「今後の予想」を聞いてみた。既にVライバーの数が爆発的に増加し飽和状態になりつつあることからリスナーが分散。結果として人気ライバーだけに注目が集まり、新たに見いだしてもらうことが難しくなっている。「中小業者は淘汰統合され、大手企業がより拡大するため、より挑戦的なコンテンツを提供できるような取り組みを行う必要がある」と予想している。あくまでサブカルチャーなので「主力となるのはまだ先」とシビアだ。
2社の意見を総合すると、Vライバーがさらに活躍する未来が見えてくる。しかし業界の現状を見渡すと専業で取り組むにはまだリスクが大きい。また、不当契約など悪意ある事業者もいる為、希望者は企業等に所属したり、法的な知識を身に付けてから活動する姿勢が必要だ。これらに注意した上で副業としてなら 〝十分未来のある職業〟と言えそうだ。近年メタバース(仮想空間)が注目されており、バーチャルテクノロジーが爆発的進化を遂げている。近未来にはバーチャルがより身近なものになる事は誰もが疑わないのだから。
(齋藤美桜、星宗敬人、伊藤知早希)