乳がん患者の乳腺組織の再建に期待 三次元の乳腺組織を作製する技術「invivoid®」を開発

大阪大など4者

 大阪大学大院工学研究科、TOPPANホールディングス、一般財団法人糧食研究会、明治の4者は、3D細胞培養技術「invivoid®」を活用して、乳汁様物質合成機能をもつ三次元の乳腺組織を作製する技術の開発に成功した。乳がんは、女性がかかるがん(悪性新生物)の罹患数第1位で推移し、罹患数は年々増えている。今回開発した技術を活用して、乳がん患者の乳腺組織の再建や培養ミルクの生産の実現を目指し、再生医療や培養食糧分野の発展に貢献する。(2面に続く)

〈出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」2017年より作成〉

創薬研究、再生医療、培養食料など幅広い用途が期待 国際学会で成果発表

 乳がんは、女性がかかるがんの罹患数第1位で推移し、罹患数は年々増えている。現代では医療技術の発展や早期発見・早期治療の開始で、その治癒率も高くなっている。ただ、「乳房摘出後の乳房再建ではインプラントや脂肪細胞注入などが行われているが、母乳合成の場となる乳腺を再建できず、母乳育児が困難になるケースも多くあった」(明治広報部)という。

 このような中、大阪大学大学院工学研究科 松﨑典弥教授とTOPPANホールディングスは共同で生体に近い人工組織を簡便に作製できる3D細胞培養技術「invivoid®」を開発。2022年1月からは大阪大学、TOPPANホールディングス、糧食研究会と明治は乳汁様物質を合成するためのヒト乳腺組織を体外で作製する技術開発と合成した乳汁様物質成分の解析研究を共同で進め、今回の技術を開発。

 今後は、この3D細胞培養技術を駆使することで、がん個別化医療、薬効や毒性試験を含む創薬研究、再生医療、培養食料など幅広い用途が期待されている。今回の成果は5月26日から31日まで、大韓民国で開催される国際学会「World Biomaterials Congress」(会場:大邱市EXCO展示場)で発表する。

「invivoid®」を活用して、乳汁様物質合成機能をもつ三次元の乳腺組織を作製