若者のオーバードーズ防止へ 市販薬の販売規制強化

20歳未満の若者を対象に販売規制強化される風邪薬
20歳未満の若者を対象に販売規制強化される風邪薬

 市販薬を過剰摂取するオーバードーズは近年、若者の間で広まり問題となっている。厚生労働省は乱用の恐れがある風邪薬やせき止めなどについて、20歳未満への大容量製品の販売を禁止するなど、2025年までに規制を強化する考えだ。

薬物乱用 背景に若者たちの生きづらさ
政府の医療費削減の裏で役割増す〝薬剤師の存在〟

 乱用の恐れがあるせき止めや風邪薬などの販売規制を強化する方針を固めた厚生労働省は若者を中心に広がる市販薬のオーバードーズ(過剰摂取)を踏まえ、20歳未満には大容量の製品や複数の販売は認めず、小容量の製品1個だけに限る。対面または映像と音声によるオンライン購入を原則とし、薬剤師などが氏名や年齢を確認する方針だ。

「グリ下」にたむろする少年少女

 大阪・ミナミの道頓堀川にかかる戎(えびす)橋の下、グリコ看板前の遊歩道=通称「グリ下」に、2021年夏ごろから見ず知らずの若者たちが会員制交流サイト(SNS)で呼び掛けて集まり、未成年が重大犯罪に巻き込まれるケースが起こっている。
 実際、「グリ下」に集まる若者らから、「グリ下の帝王」と呼ばれていた男(31)が2月、女子中学生3人に睡眠導入剤を譲り渡す見返りにわいせつな行為をしたとして再逮捕され、今回の逮捕で3回目だ。

大阪・ミナミのグリコ看板下の遊歩道
大阪・ミナミのグリコ看板下の遊歩道

60人に1人は市販薬乱用の経験

 かつては危険ドラッグも合法的に使える「脱法ドラッグ」として社会問題化したが、14年に危険ドラッグの所持や使用が指定薬物として禁止されて以降、この問題は沈静化し、新たな問題として拡大したのが、市販薬の乱用だ。
 一般の高校生を対象に「過去1年の間に市販薬を乱用した経験がある」と答えたのは、約60人に1人、2クラスに1人ぐらいの割合。男性に比べて女性の割合が高く、また学年が上がるにつれて増加していることもわかった。
 識者からは乱用する背景には「オーバードーズをすると幻覚や精神の興奮状態によって、不安やストレスから一時的に解放してくれるという。このため、学校や職場等の人間関係の悩みや、家庭の悩みを抱えている若者が、手に入りやすい市販薬でオーバードーズをする事例が多くみられる」 と指摘されている。
 厚生労働省の「医薬品販売制度実態把握調査(21年度)」では、約5000件の薬局とドラッグストアを調べたところ、乱用のおそれがある市販薬を複数購入しようとしたときに「普通に購入できた」店舗が26・7%あったという。

乱用のおそれがある市販薬の販売規制強化案

「アライ」美容目的での使用に警鐘

 4月8日から販売される大正製薬の内臓脂肪減少薬「アライ」(一般名・オルリスタット)は、食事中の脂肪の吸収を抑制し、便と一緒に排泄することで、内臓脂肪や腹囲を減らすことが期待される国内で初めての薬だ。日本人への臨床試験では、1年間の服用で腹囲が4・73㌢減少した。
 政府は医療費の削減を狙っており、「アライ」は医師の処方せんなしで、薬剤師の対面販売のもとで購入できる。購入の前には、服用の3カ月前から食事や運動といった生活習慣の改善が分かる記録を薬剤師に見せるなどいくつもの〝ルー ル〟が設けられている。
 日本肥満学会では「痩せた人が興味本位でもっと痩せるために美容上服用するということは全く推奨されない薬」と警鐘を鳴らしている。