【外から見たニッポン】平等と公平って同じ意味?

(Spyce Media LLC 代表 岡野 健将)

Spyce Media LLC 代表 岡野健将

平等と公平、意味は同じ? それとも違う?

皆さんにとって平等と公平は同じ意味ですか? 日本社会ではこれら2つの言葉は混同されているような気がします。

わかりやすい例を挙げると…

【同一労働同一賃金】同じ労働内容なので同じ賃金で平等

【新卒採用】同じ会社に同じタイミングで就職するから同じ待遇と賃金で平等

【義務教育】同じ年齢だと同じ学年で同じ内容の授業を受けるから平等

【国民皆保険】日本国民は等しく保険でカバーされるから平等

同一労働とはいえ、個々人の能力には差があり、同じ時間内にこなせる仕事量も各自で違います。これで同じ賃金では不公平では?

同じ新卒採用とはいえ、こちらも個々人の能力には差があり、また就く部署によって仕事内容も環境も違います。それで同じ待遇や給料では不公平では?

義務教育とはいえ、子供それぞれの習熟度は違うのに、同じ内容の授業を受けさせられるのは不公平では?

国民皆保険とはいえ、保険を多用する人と全く使わない人が平等に保険料を負担させられるのは不公平では?

このように平等という観点からみると「その通り」と思えることでも、公平という観点からみると「それは違うのでは?」と思えてしまいます。

日本社会は平等に重きを置いていて、 弱者を救済したり落ちこぼれを出さないようにすることで、皆が等しく同じ待遇を受けられることを大事にしています。

しかし、それは出来る人やもっと頑張りたい人にとっては不公平でしかありません。

アメリカにもEqual RightやEqual Opportunityなどの言葉があり、権利や機会の平等を守ろうとしています。これらを無視したり軽視したりするとすぐに告訴されます。しかし、この守られた権利や機会は全ての人に平等に与えられても、どう活かすかによって結果は変わってきます。

人それぞれ生まれ育った環境や持ち合わせた才能、向き不向きなどが違いますが、それは不公平とは別ものです。得られる結果は違っても、それぞれの人が勝ち得たものであって 頑張った結果なので公平だと考えるのです。

逆にFairという表現を使うときは裁判沙汰になったりすることは少ないと感じます。平等とは基本的人権の一部なので守られるべきものですが、公平は権利のように絶対的なものではなく、総体的な判断の中で出てくるものだからです。

誰もが大学に行く権利を平等に与えられます。しかし成績優秀者しか合格しません。それは公平な審査の結果です。同じ大学の同じ学部を同じ年に卒業し、同じ会社に就職しても給料は同じではありません。会社に就職するまでは平等に機会が与えられますが、それをどう活かすかで、初年度の給料が変わります。同じく同一労働であってもより生産性の高い人はより多くの賃金を得られます。

同じ年齢でも成績の優秀な人は飛び級してどんどん学力を高め、知識を広げていきます。成績の悪い人は年齢に関係なく同じ学年でわかるまで学べるので、わからないまま進級するよりそれはそれで良いことです。

民間保険は利用頻度が多い人、高額な補償を受け取った人の掛け金は上昇します。その方が公平だからです。

平等重視の社会によって救われたものも沢山あると思いますが、その裏では生産性が伸びず、全体的にあらゆるものが低いレベルに固定され、能力のある人の成長を押さえ込み、可能性の目を積んできたため、全体的に停滞し、天才やスターが産まれ難い土壌になってしまっています。

みなさんも平等と公平について一度自分なりに考えてみてください。

【プロフィル】 State University of New York @Binghamton卒業。経営学専攻。ニューヨーク市でメディア業界に就職。その後現地にて起業。「世界まるみえ」や「情熱大陸」、「ブロードキャスター」、「全米オープンテニス中継」などの番組製作に携わる。帰国後、Discovery ChannelやCNA等のアジアの放送局と番組製作。経産省や大阪市等でセミナー講師を担当。文化庁や観光庁のクールジャパン系プロジェクトでもプロデューサーとして活動