▲小学校教員と中学校英語教員とで行う「むくのき学園」の5年英語授業
今年4月から小学校高学年(5、6年)で教科担任制が始まる。中規模校・大規模校では学校内で授業交換、小規模校では中学校教員の活用など小中連携や小学校同士の連携で教科担任制の導入を目指すなど、地域や学校の実情に合わせた対応が求められる。
教員の大幅増、困難
政府は昨年2月、公立小学校高学年での教科担任制を拡大するため、2022年度に教員の加配定数を950人増やすことを決めた。
今後も、文部科学省は5年度までに3800人の加定数増を目指し、4年をかけて小学校高学年における教科担任制を段階的に推進するとしている。
なぜ、教科担任制
すべての教科を担任が教える学級担任制を基本とする小学校で、なぜ、小学校高学年で教科担任制を導入するのか。
その背景には、▽児童の学 力向上▽複数の教員が多面的 に児童を見ることによるきめ 細かな指導の実現▽小学校か ら教科担任制に慣れ中学校へ の移行をスムーズにする「中 1ギャップ」の緩和▽教員の 働き方改革―の4つの目的がある。
▲国語の授業でも小中一貫校のメリットを生かして教師二人で一つの授業を行うチームティーチング(TT)を導入している
教員の「教える力」
小学校高学年ともなると学習内容が難しくなり、指導力がより求められるようにな る。専科指導の加配教員による指導をはじめ、授業交換などで自身の得意な教科を担当することで専門性の高い指導の実現を目指す。また、教材研究も教科を絞って取り組め効率的に行うことができる。このことから、教育現場での働き方改革につながる可性もある。
新年度からの本格導入で、外国語、 算数、理科、体育の4教科で優先的に教科担任制を進める。
文科省は教科担任制の利点として、教員の持ちコマ数が減って負担が軽減し、授業準 備がしやすくなって授業がより分かりやすくなるとする。 子どもにとっては、中学校進 学直後に学びがつまずく「中 1ギャップ」の防止につなが るメリットなどを挙げる。
一方で、1人の教員が複数学級で授業すると、時間割編成が複雑になる恐れがある。 また、一部の保護者からは、「教科で教員が変わることで『教える力』の差がより目立つようになるのでは」との声も聞かれる。
〈教科担任制導入の4本柱〉
①児童の学力向上
②きめ細かな指導の実現
③「中1ギャップ」の緩和
④教員の働き方改革
全教科週1時間、中学教師がTTで授業
小中一貫校むくのき学園
▲小学校教員と中学校英語教員とで6年英語スピーキングテスト
大阪市内の公立小中一貫校に目を向けると、すでに施設一体型一貫校ならではの強みを生かして教科担任制を導入している学校が多い。14年に啓発小と中島中が一つとなり市内で2番目の小中一貫校となって開校した「むくのき学園」(藤澤淳校長)では開校前 から小中一貫教育に取り組んできた。
学園では小中9年間を「4・ 3・2」制として教育に取り組み、小学校5・6年の英語の授業では中学校の英語教師が教科担任制で教えている。 さらにネーティブの教師が週に1、2日、教師2人で一つの授業を行うチームティーチング(TT)の形で授業を教えている。藤澤校長は「一人の先生が授業をし、もう一人の先生が生徒の学習補助をします。 生徒一人ずつの学習状況に合わせて指導できるので、 着実に力をつけられる」と話している。
また、全教科(算数・理科・ 国語・社会・英語・体育・音楽・ 家庭・図工)に週1時間、小学 校教師と中学教師2人で授業 を行うTTを採用。ICT(情 報通信技術)活用事業モデル校として5・6年生のICT教育の授業では小中協働授業を充実させている。教科担任制というより臨機応変に中学校の先生が小学校5・6年の授業に加配の形で応援に入っている。
実際に小学校で授業を行っている中学教員は「小学校の授業内容を実際に見ることができるので、自分自身の授業実践につながる」「小学校の先生、児童ともにコミュニケーションをとれるのでお互いに安心感が生まれる」「子どもも中学の先生を知っているので中1ギャップが起きにくい」などの感触を得ている。
藤澤校長も「複数の教員の目で子どもを見られる意義は大きい。施設一体型小中一貫校ならではの強みを生かし、個性や能力を伸ばす教育を教職員が一丸となってすすめたい」と話している。