離れて暮らす親の食事が気になる。でも、毎日様子を見に行くのは難しい。年齢を重ねれば、自分自身も買い物や調理が負担になるかもしれない。人生100年時代、健康を維持するには栄養バランスにも気を配りたい。毎日の食事は当たり前の営みだが、それを無理なく続けることは、決して当たり前ではない。

高齢者の一人暮らしは、今後も増える見通しだ。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、65歳以上の世帯主がいる一般世帯に占める単独世帯の割合は、2020年の35.2%から2050年には45.1%に上昇するとされる。日々の食事をどう確保するかは、住み慣れた地域で暮らし続けるうえで、身近な課題の一つとなっている。
そこで注目したい選択肢の一つが、地域の配食サービスだ。大阪市城東区野江を拠点に宅配弁当を手掛ける「おおさか楽膳」は、港区の「いそじ給食」が手作りする日替わりのおかずを、地域密着の新聞販売店が届けている。栄養士が考案した献立は、お肉メインとお魚メインから選べる。不在時には専用の置き配ボックスに保冷剤を添えて届けるなど、利用しやすさにも工夫を凝らす。

利用を申し込むのは、食事を受け取る本人だけではない。同事業を展開するHITSの代表、高宗知幸さんによると、沖縄に住む娘が、大阪で一人暮らしをする母親の安否確認も兼ねて申し込んだケースがあるという。「お弁当は手渡しが基本。希望があれば配達前に一報を入れることもあります。以前、母親と連絡がつかず心配した娘さんに頼まれて電話したところ、旅行に出掛けていたことが分かり、笑い話になったこともあります」と振り返る。日々の食事を届けるサービスが、離れて暮らす家族にとって、親の暮らしを気に掛ける接点にもなっている。
配食サービスだけで、孤食や高齢者の孤立といった問題を解消できるわけではない。それでも、食事の準備を支える仕組みが身近にあれば、本人や家族が抱える負担を軽くできる可能性がある。幾つになっても、誰もが住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるように。日々の食事を支える選択肢を地域に増やしていくことが、これからの社会に求められている。(西村由起子)
