
女性管理職や役員の割合が伸び悩む中、企業はどう変わるべきなのか。女性の経営参画の意義について、自身の経験を踏まえ、インターアクト・ジャパンの帯野久美子会長に聞いた。
女性と企業との意識ズレる
厳しい暑さの毎日に、ふと昨年の大阪・関西万博のことを思い出す。汗をかきながら大屋根リングの下を歩いて、数えきれないほどのイベントに参加した。多くは女性の活躍をテーマにしたものだった。カナダパビリオンでは、カナダの先住民女性起業家と大阪・関西の女性起業家によるラウンドテーブルに参加した。また、オーストラリアパビリオンでは、女性起業家を招いたアフタヌーンティーが開かれた。どれもが忘れられない思い出だ。
女性活躍は大阪・関西万博の主要テーマの一つでもあった。女性パビリオンは「When Women Thrive, Humanity Thrives(女性が輝けば、人類が輝く)」を掲げ、「女性が活躍する社会こそ、より良い社会」というメッセージを世界へ発信した。
G7最下位の現実
しかし、肝心の日本の現状は厳しい。女性管理職や役員の割合はG7で最下位。男女雇用機会均等法施行から40年、働く女性は大きく増えたものの、意思決定の場への参画は進まない。かつて政府が掲げた「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位の女性の割合を、少なくとも30%程度になるよう期待する」。いわゆる「202030目標」は、その目標の半分も達成できなかった。目標年限は「2030年代のできるだけ早期」へと見直されたが、2024年時点の女性管理職比率は16・8%にとどまる。
企業は、性別にこだわらず能力・業績を適正に評価するようになった。それでも女性役員が増えない背景には、役員候補となる経営幹部層に女性がまだ少ないという現実がある。
昇進望まぬ女性増加
ではなぜ、経営幹部に女性が増えないのだろうか。そもそも女性は、リーダーになりたがっているのだろうか。
実は、「リーダーになりたい」と考える女性の数は減少していて、18年に「昇給・昇格したくない」と答えていた女性の割合が45・4%だったのに対し、25年の調査では、現在の職場で昇進を希望しない女性が53・2%と半数を超えている。
確かに私自身も、リーダーになりたいと特に望んだ記憶はない。それよりも、「好きな仕事をしたい」「英語で身を立てたい」との思いだけで生きてきた。やがて会社を設立するに至ったが、仕事に対する価値観は今も変わっていない。
変わろうとしない企業側
そんな中で、人材不足のせいか、外部委員として声がかかり、経営に参加するようになった。女性は私一人である。
そこで驚いたことは、会議で大声を出す人がいることだ。大声を出す、怒鳴るのは暴力である。その場で周りは黙っても、誰も納得はしない。力に及ぶ手段を持たない多くの女性は、ただ相手を説得するしかない。だから納得するまで話し合う。もう一つは限りない上昇志向と、組織内の派閥である。もともと権力構造からはみ出ていた女性にとって、出世は無縁のもので、出世のための闘いは、限りないエネルギーの浪費にしか見えない。
問題は、こんなふうに価値観の異なった女性に経営参画を求めながら、企業側が変わろうとしないことである。既存の男性中心の企業文化に、女性を同化させようとする。
東京証券取引所プライム市場の主要企業を対象にした調査でも、女性が役員登用を阻む障害の1位は「男性中心の文化や人間関係」だった。一方、男性が挙げた1位は「家事や育児の負担が女性に偏りがちな社会構造」で、女性の意識と企業との間に隔たりがある。
柔軟な組織は強い
そもそも企業にとって、女性役員を登用するメリットとは何なのか。「企業価値の向上」「女性活躍のロールモデル」などが多く挙げられるが、それよりも大切なのは、多様な価値観を経営に生かすことで、企業が柔軟になることである。組織は柔軟になれば強くなる。柔軟な組織は、しなることがあっても、折れることはない。
不確実な新しい時代を、しなやかに生き抜くために、女性管理職を増やす意味を、企業も、女性自身も、しっかりと意識して、次なる「2030目標」の達成に向かって進んでいってもらいたい。
話を聞いたのは・・・
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インターアクト・ジャパン会長 帯野久美子さん
大阪生まれ。大学卒業後、フリーランスの翻訳家として活動を開始、1985年株式会社インターアクトジャパンを設立、現在に至る。2009年から2015年まで和歌山大学理事・副学長を務める。大阪府人事委員会委員長、大阪市教育委員、文部科学省大学設置・学校法人審議会委員、中央教育審議会委員などを歴任。現在は、東北大学運営方針会議委員、高野山大学客員教授、公立大学法人大阪理事、南紀白浜エアポート監査役、在大阪カナダ名誉領事。
