お寺ver.2.0 仏事だけじゃない! 時代と共にアップデートするお寺

 全国に7万以上も存在するお寺(ちなみにコンビニは5万店舗)。お寺というと「葬儀や仏事を行うところ」というイメージがあるが、元々は地域の教育や福祉、文化体験の場として人々にとって身近な存在でもあった。今、次の世代(ver.2.0)における新しいお寺のあり方を模索すべく、各寺でユニークな取り組みやリニューアルが行われている。進化するお寺を取材した。

三津寺(みつてら)

お寺とホテルが一体化
ミナミの繁華街のど真ん中で仏教に触れる

 今年11月、全国でも珍しい「高層ホテル一体型寺院」として落成するのが、難波・心斎橋の「みってらさん」こと「三津寺」だ。江戸時代の文化を残す本堂を次の100年に繋げたいとの思いから、「東京建物」と連携し15階建ての建物内に本堂、庫裏(くり)、境内、ホテル、テナントが入る複合型施設として改築。観光を通して身近にお寺を感じ、心身ともに安らぎが得られる、極めてユニークな施設として再建される。

 また境内は御堂筋側に開かれており、観光客のみならず地域の人も足を踏み入れることが可能。誰でも気軽に仏教文化や美術・歴史を体感できるよう、さまざまなおもてなしや取り組みを予定している。

三津寺1
▲三津寺敷地内にオープンする「カンデオホテルズ大阪心斎橋」(写真は完成予想図)
三津寺2
▲御堂筋に臨む境内は誰でも気軽に入ることができる(写真は完成予想図)
三津寺 副住職 加賀俊裕さん
副住職 加賀俊裕さん

忙しい現代社会こそ、ほっと一息ついて自分を見つめ直す時間が大切です。ちょっとお寺に来てお抹茶を飲んだり、ときには絵写経をしてみたり。慌ただしい日常生活の隙間に、そんな時間を気軽に取り入れられる場所にしたいと思っています。お茶会やワークショップなども開く予定なので、フラッと覗きに来てくださいね。

七宝山 大福院 三津寺
tel.06-6211-1982
大阪市中央区心斎橋筋2-7-12

南御堂(みなみみどう)

お寺での個性溢れる結婚式

 大阪人からは“みなみのみどうさん”の愛称で親しまれてきた南御堂。正式名称は400年以上の歴史を誇る真宗大谷派難波別院。2019年11月には、東急ホテルズの「大阪エクセルホテル東急」などが入った複合施設「積水ハウス不動産関西南御堂ビル」(地上17階建て)が建設され「新山門」が誕生した。新時代の山門にふさわしい開口部からは、本堂が真正面に見える絶好のシチュエーションとなり御堂筋の新たなランドマークとなりそうだ。同寺では今、増えてきている仏前結婚式を執り行うことができる。「仏前結婚式=お坊さんがするもの」というイメージを持つ人が多いが、実は一般の人でも本堂で結婚式ができる。南御堂の専門サイトから情報入手できるのも嬉しい。

南御堂1
▲都会に佇む由緒あるお寺
南御堂2
▲美しく荘厳された本堂で式を執(と)り行う
南御堂の輪番(代表役員)秃信敬さん
南御堂の輪番(代表役員)秃信敬さん

5月末で3年間にわたる本堂の耐震工事も無事終了しました。ぜひ新山門を潜って参拝いただければ。
8月27、28日に4年ぶりに「盆おどり」を開催します!
ぜひご参加ください。

大谷派難波別院 南御堂
tel.06-6251-5820(代)
大阪市中央区久太郎町4-1-11

萬福寺(まんぷくじ)

都会の中心で人々をつなぐ寺カフェ

 堀江公園の隣に毎週木・金・土に出現する「寺カフェ 茶庭(ちゃにわ)」。400年の歴史を持つ「萬福寺」の境内に併設する寺カフェだ。歴史あるお寺と美しい緑の庭を眺めながら、オリジナルの和スイーツが楽しめる。憩いの場として自然と人々が集い交流できる空間となっている。

 また、境内では季節に応じ子どもから大人まで楽しめるイベントを開催。来る7月1日に開催される七夕まつりでは、流しそうめんほかさまざまなワークショップが出店され、夜にはキャンドルナイトが行われる。

萬福寺1
▲境内のお庭を楽しめる「寺カフェ 茶庭(ちゃにわ)」
萬福寺2
▲流しそうめんを楽しむ子どもたち
住職 石田克彦さん
住職 石田克彦さん

時代や街の変化によって、寺子屋やカルチャースクールなどと役割は変わっていきながらも、萬福寺は昔から地域に開かれた場所として活用されてきました。もともと地域にお住まいの方、最近引っ越して来られた方、そして観光客の方。さまざまな人にとってお寺が気軽に集える場所になればと思っています。

浄土真宗本願寺派 萬福寺
tel.06-6531-1328
大阪市西区南堀江1-14-23

常光円満寺(じょうこうえんまんじ)

ココロとカラダがゆったり整う「寺×ヨガ」

 吹田の地で創建1300年の歴史を誇る「常光円満寺」。新しいお墓の形として堂内墓地で大阪初の「カード式納骨堂」を誕生させた。“きっちりはできないけど、ご先祖様をないがしろにしたくない”と忙しい現代人にあった新しいお墓参りとして注目を浴び、約1500件以上の申し込みがあったという。利用者さんたちからは「駅の近くなので思いたったときに気軽に行ける」「歴史あるお寺の永代供養付は安心できる」「天候を気にせずバリアフリーなのもいい」などの声があがっている。常に新しい試みをしている同寺だが、“人と人との交流も大切にしたい”と『寺ヨガ』も行っている。『寺ヨガ』(夜の部)は、第1・3金曜日午後8時開始(約2時間)となり参加費は1100円。仏像が並びお香がかおる厳かな空間で行われ、瞑想や法話もあって心静かにととのう。

常光円満寺ヨガ
▲寺ヨガの様子
常光円満寺2
住職 藤田晃秀さん
住職 藤田晃秀さん

寺ヨガのほかに「写経会」や「マルシェ」、「夏祭り」なども行っています。たくさんの人の交流の場としても足を運んでいただけたら、と思います

常光円満寺
tel.06-6381-0182
吹田市元町28-13

番外編

弁財天に弘法大師にお稲荷さん!?
神仏オールスターに会えるお寺を発見

 地元で「聖天さん」と呼ばれ慕われている了徳院。江戸時代以前に建立され400年以上の歴史がある。境内に一歩、足を踏み入れると都会の喧騒を忘れさせてくれるほど静かな時間が流れており、まるで時が止まっているような不思議な感覚になる。中には休憩所もあり、自由に散策ができるところも嬉しい。

福島聖天 了徳院1
▲正門
福島聖天 了徳院 彫刻
▲住職の上にある子持ち龍の彫刻は大阪府の指定文化財。夜になると現れる弁財天を見つけられるだろうか?

 このお寺は弁財天、十一面観音、白髭稲荷大明神、阿弥陀如来、弘法大師、世直し地蔵など神仏が習合している。神様、仏様のパワーがいっぱいの、このお寺の住職が16代目の高岡義光さん。今年で68年目になる子ども園「和光園」の園長でもある高岡さん自身がこのお寺の魅力でもある。

福島聖天 了徳院3
▲「弁財天」と「倛哩迦羅龍王」
福島聖天 了徳院4
▲水掛不動明王

福島聖天 了徳院(りょうとくいん)
tel.06-6451-7193
大阪市福島区鷺洲2-14-1