小学生の発想力競う、プログラミング府大会決勝 長居小の津村さん2連覇

 小学生がプログラミングの成果を競う「おおさかキッズ プログラミングアワード2025(全国選抜小学生プログラミング大会」の大阪府大会決勝が14日、共同通信社の大阪オフィス(大阪市中央区)で開かれ、予選を勝ち抜いた10人のファイナリストが、身近な困りごとや社会課題の解決をテーマにした作品を発表した。最優秀賞(大阪府教育委員会賞)には、SNS上のトラブル防止を題材にした「SNS PATROLLER」を制作した津村優成さん(大阪市立長居小学校6年)が2年連続で輝いた。

審査員の質問に回答する津村さん。作品の工夫点を堂々と語った(=大阪市中央区)

 今回のテーマは「君のアイデアで、みんなの毎日をハッピーに」で、審査基準は発想力40点、表現力30点、技術力30点の計100点で評価。大会はアイデア作品を含む応募数62作品の中から予選を通過した10人が決勝に進み、プレゼンテーションに臨んだ。

 津村さんの作品「SNS PATROLLER」は、自身がSNSを使い始めた中で会話のトラブルを経験したことから着想を得て、悪意のあるSNSのメッセージをタップで叩いて消すというゲームを制作。当日のプレゼン時には、制作準備段階で消費者庁のデータを調べたり、会話文の作成に生成AIを使用したなどのこだわりを語った。津村さんは3月8日に東京・品川で開かれる全国大会に出場する。昨年も全国大会へ進んだ津村さんは「去年のリベンジを果たすために、もっと勇気を出して挑戦していきたい」と意気込みを話した。

プログラミング府大会決勝で最優秀賞を2連覇した津村さん。「全国大会でリベンジし、より良い成績を目指したい」と意気込む(=大阪市中央区)

 他の受賞者は次の通り(敬称略)。
週刊大阪日日新聞社賞
▼松塚まなかさん(小3)「目玉焼きちゃんとクッキング」
 目玉焼きの黄身の固さが自分好みに焼けるよう、時間を測ってくれたりキャラクターが応援してくれる。

「目玉焼きちゃんとクッキング」をプレゼンする松塚さん(=大阪市中央区)

共同通信社賞
▼富田來偉さん(小6)「JR北海道 ディーゼル特急運転シミュレーター」
 実際の電車の運転をリアルに再現。乗客の乗降や、北海道の景色を車窓から楽しめるという工夫も。車掌の制服姿でプレゼンし、会場を沸かせた。

車掌の制服姿で「JR北海道 ディーゼル特急運転シミュレーター」を発表した富田さん(=大阪市中央区)

優秀賞(以下順不同)
▼尾茂弥新さん(小6)「スカ―ドラゴンズ」
 水・陸・天候に関する環境問題についての2択クイズを解き進め、正解すると敵が倒せるというゲーム。

▼山本楽奈さん(小6)「町を救え!パトロール!!」
 誘拐されそうな人を見た時にどういう対応をしたらいいか、シミュレーションゲームを通して学ぶ。

▼出雲湊さん(小6)「早期ハッケン!病気発見アプリ」
 病気を発見することができる缶に歯ブラシなどを置くことで、事前に病気を防ぐというアイデアをストーリー仕立てに。

▼宇田川大翔さん(小5)「歩きをサポートする おじいちゃん椅子ロボ」
 アイデアでの応募。実際に自分で車いすに乗った体験を生かし、GPSや移動サポート、休憩所への誘導などをするイスを考案。

▼伊藤梛央さん(小4)「SAVE THE OCEAN」
 海に漂うプラスチックごみをクリックで集めるゲーム。拾えなかった場合、ごみを食べてしまった魚が食卓に出るという演出。

▼樋口新大さん(小2)「栄養アプリ」
 食物のイラストをクリックすると栄養素がわかる「おしえてモード」、指示される栄養素の食物をクリックして当てる「ゲームモード」が楽しめる。

▼渡辺蒼大さん(小5)「人間関係ゲーム」
 友だちとのやり取りを再現し、「こういう時にどう返事したらいいか」を2択で選択し、親密度のポイントを貯めていくゲーム。

 審査は、週刊大阪日日新聞社営業局チーフの磯見愛香氏、ロジカ・エデュケーション代表取締役CEOの関愛氏、デジタル人材共創連盟代表理事の鹿野利春氏の3人が担当。後援は文部科学省、経済産業省、デジタル庁、大阪府教育委員会、人工知能学会、デジタル人材共創連盟。

 審査時間中には、来場者向けのワークショップも行われた。旭区のプログラミング教室サニーアカデミー代表の松原良和氏は、生成AI「Gemini」を活用したセミナーを実施。自分の作品についてAIに改善点を尋ねたり、「小学生にも分かるように説明して」と指示したりする活用法を紹介した。AIからは「原稿ばかり見ず、会場の人の顔を見て発表してみよう」といった助言も示され、参加した出雲湊さんは「自分の改善点が見えた」と感想を語った。

大会の審査時間中に行われた、生成AI「Gemini」を活用したセミナーのひとこま。宇田川さん(手前)が考案した「歩きをサポートする おじいちゃん椅子ロボ」について、AIが生成したイメージ画像を画面に映し、祖父とともに改良点や工夫を確認した

 もう一つは、北浜・日本取引所の玉岡真一氏による金融教育講話。「夢をかなえるヒント教えます~知っておきたい社会とお金の仕組み~」と題し、江戸時代から続く北浜の歴史や、大阪取引所の役割、「会社とは何か」「証券取引所は何をする場所か」を、保護者も交えて解説した。

 審査講評で関氏は、「今年の作品は昨年よりさらにパワーアップしている」と評価。特に津村さんについて、継続参加による技術力の伸びを称賛し、「プログラミング教育の目的は、プログラマーになることではなく、『前に踏み出す力』『考え抜く力』『チームで働く力』を育てること」と述べた。

 鹿野氏は「アイデアと技術の両方が大切で、『誰のために、何を作るのか』という目的意識が重要」と強調。中高生向けコンテストの紹介とともに、6年生には進学後の挑戦を促した。文部科学省での経験にも触れ、小学校でのプログラミング教育導入や新学習指導要領の動向を紹介した。

 閉会にあたり、共同通信社大阪企画事業部の井上昇氏があいさつ。受賞者や保護者、審査員、スタッフへの感謝を述べ、「3月8日の全国大会での津村さんの活躍を応援してほしい」と呼びかけた。最後に出場者全員で記念撮影が行われ、大会は閉幕した。

大阪府大会決勝で健闘したファイナリストと、関係者らが記念撮影に収まった。社会課題の解決をテーマに、多彩なアイデアと技術力を披露した子どもたちの笑顔が並んだ(=大阪市中央区)
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