〝まっとうな商売〟で信頼構築 生鮮スーパー「黒門中川」の挑戦

料理人が信頼を寄せる、確かな目利きと仕入れ

 大阪・日本橋の黒門市場は、古くから「天下の台所」として、なにわの食文化を支えてきた。しかし近年は、インバウンド向けの食べ歩きスポットへと姿を変え、ネット上では「ぼったくり商店街」と揶揄(やゆ)されることもある。そんな中、周囲の流行に流されず、地域の飲食店や住民に寄り添った商売を貫く生鮮スーパー「黒門中川」は、異彩を放つ存在だ。鮮度の良い魚介類や青果、精肉を適正価格で提供する同店の、年末商戦に向けた売り場づくりに密着した。(森陽一)

鮮度は漁港級!

兵庫県香美町・柴山漁港から入荷した松葉ガニを手にする村田鮮魚部長

 「この前と同じイクラ、12㌔㌘×6ケース、来週もいける?」―。12月初旬の早朝。観光客もまばらな時間帯だが、黒門中川の鮮魚売り場には多くの料理人が買い付けに訪れていた。大量のイクラを注文していたのは、芸能人がお忍びで通う和食店のオーナーシェフで、古くからの常連客だという。
 同店の鮮魚部は、ミナミの料亭や割烹、和食店などから厚い支持を集めている。「泳いでる鮎や鯉が欲しい」「今日はすっぽんある?」といった注文が入ることも珍しくない。
 取材日は、日本有数のズワイガニ水揚げ量を誇る兵庫県香美町・柴山漁港から松葉ガニ50杯が入荷。同店鮮魚部長の村田隆介さんが培った人脈により、信頼できる仲買人を通じて独自ルートで仕入れているという。
 発泡スチロール箱を開けると、カニの手足がしきりに動き、活きの良さが伝わる。「見ての通り、元気が良すぎてパックに入れられないんですよ」と笑う村田さん。記者のような一般客にとって、なかなか気軽に松葉ガニは買えないが、見ているだけでも不思議と気分が高揚する。通りすがりの客も珍しそうに「季節の風物詩」を写真に収めていた。

冷凍ガニは昨年よりも割安に

「カニの品ぞろえで大阪一を目指す」と意気込む、鮮魚部チーフの月成さん

 松葉ガニよりも手軽に楽しめる海外産の冷凍ガニは、家庭用はもちろん、お歳暮などの贈答品としても人気だ。同店ではこれから本格化する年末商戦に向け、カニの品ぞろえで大阪一を目指すという。
 肉厚でコリコリとしたうま味が特徴の「バルダイ種」、さっぱりと食べやすい「オピリオ種」を中心に、化粧箱入り、フルポーション(むき身)、ハーフポーション(半むき身)など40種類以上をラインアップしている。
 気になる今年の相場だが、仕入れ値は昨年より1・2〜1・3倍に上昇。しかし売値は平均して15%ほど安く設定したという。「今年は薄利多売でいこうと決めました。利益度外視で、とにかくお客さんに喜んでもらいたい一心です」と、輸入ガニの仕入れを担当する鮮魚部チーフ・月成啓一郎さんは話す。
 今年は物価高騰が続き、家計にとって厳しい1年になった。頑張った自分や家族へのご褒美に、「買い求めやすくなったカニで舌鼓」というのも悪くないだろう。

毎週火曜日には「舞鶴直送市」を開催。京都の海の幸を届けてくれる

黒門中川のここがすごい!

明石浦漁港昼網(毎週土曜14時頃〜)

当日水揚げされた「明石の海の幸」を直送

 明石浦漁業協同組合の競りで当日水揚げされた魚介類を、水槽に入れたままトラックで直送。取材日には鯛、タコ、じゃこえび、サワラ、ヒラメ、生しらす、ガシラ(カサゴ)などが入荷。生しらすを軍艦巻きに仕立てて販売したところ、飛ぶように売れていた。

9月から新しく昼網開始!!

天然ネタを使った刺身と寿司

仕入れた新鮮な魚を店内で調理

 今年春、鮮魚コーナーの面積を拡大し、一般家庭や子ども連れの家族客の来店が目に見えて増えた。中でも人気なのが、「鮮度に自信あり」の刺身と寿司。丸魚で仕入れた鮮魚を店内で捌き、刺身や寿司に仕上げる。天然ネタを使った寿司がずらりと陳列されたショーケースは圧巻だ。

レア野菜の宝庫

ベテラン社員が仕入れる多彩な青果

 青果コーナーの冷蔵ショーケースには、ビーツ、ホースラディッシュ、大和芋、生わさびなど一般のスーパーではあまり見かけない商品がずらりと並ぶ。仕入れを担当するのは、この道50年近いベテラン社員。「珍しいものがあると、お客さんが目的を持って買いに来てくれる」と笑顔を見せる。
 もちろん、定番の野菜も豊富に取りそろえる。いずれも新鮮さが際立ち、鍋の食材にぴったりだ。

珍しい食材もたくさん!

肉を店内で成形・加工

直仕入れで実現する、鮮度と希少部位の充実

 精肉コーナーでは、ランプ、マルシン、イチボ、ヒウチ、カイノミ、ラムシン、シャトーブリアンといった希少部位を幅広くそろえる。メーカーから直接仕入れ、店舗で成形・加工するため、鮮度は抜群。中間コストを大幅にカットしているため、百貨店などに比べてお買い得なのも魅力の一つ。

隠れ人気メニュー「国産牛のボイルすじ」
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