「歩行者主役に」再編進む御堂筋 官民連携で新たな都心像

両側に広がる歩道と緑が特徴の現在の御堂筋。車道を中央に、左右それぞれ約15・5㍍の歩行空間が整備され、滞留と回遊を促す都市空間へと進化している=10月20日(編集部撮影)

 大阪各地で再開発が進むなか、市中心部を南北に貫くメインストリート・御堂筋でも再編が進む。国の「特定都市再生緊急整備地域」に指定され、2037年の完成100周年を見据えた「御堂筋将来ビジョン」では、緑を取り入れた歩行者中心の空間づくりを進め、将来的にはフルモール化(完全歩行者空間化)も視野に入れる。
 沿道再開発やイベントなどの動きが重なり、まちの変化が一段と〝見える化〟してきた今、現状を追った。 (西山美沙希)

「御堂筋将来ビジョン」資料より(市作成)

「御堂筋を森に」市が描く〝緑の都心軸〟

 御堂筋の再編は、機能優先だった都市づくりから、人が立ち止まり、交流し憩う〝緑の軸〟へと発想を転換する流れの中で進められてきた。道路の価値を「通過」から「滞留」へ
とシフトさせる構想は、19年策定の「御堂筋将来ビジョン」で示されており、 世界的な都市づくりの潮流とも重なる。
 その方針を裏付けるように、横山英幸大阪市長は最近の公開セッションで「御堂筋を森にしたい」と語り、「歩いて楽しい・滞在したくなる大阪」を目指す姿勢を示した。

拡張された歩道、変わる街並み

 こうした方針のもと、市は側道を歩道に転換する事業を進めている。御堂筋の自動車交通量は最盛期から約6割に減る一方、歩行者数は場所によって3倍以上に増えている。新橋交差点から難波西口交差点までの区間では、側道を閉鎖して歩道に転換する整備が完了し、従来の2倍以上となる約15.5㍍幅の歩道空間が誕生した。歩行者・自転車・ベンチや植栽のある滞留空間に分けられ、安心して歩けるようになっている。
 沿道の街並みづくりも進む。淀屋橋~本町間は企業本社が並ぶビジネス街、本町~心斎橋間は高級ブランドが並ぶ商業街と、御堂筋中心部は二つの顔を持つ。市計画調整局 都市計画課担当課長代理の鈴木淳也さんは「特に淀屋橋~本町間はオフィス街としてのエリアブランドを確立していた一方、かつては夜間や休日のにぎわいが乏しい状況だった。そこで沿道ビルの低層階に飲食店や物販店を誘導してにぎわいを底上げしている。また、建物は『歩道側に4㍍後退して建てる』『高さ約50㍍でビルの軒線をそろえる』といった決まりを設け、さらに事前のデザイン協議で外壁の素材や色彩、夜間のライトアップや店内の灯りが歩道ににじむ『漏れ明かり』の演出も整え、御堂筋らしい上質なにぎわいと風格ある街並みを積み上げている」と述べる。

THE GATE HOTEL 大阪 by HULIC」が来年オープンする「(仮称)心斎橋プロジェクト」の外観=10月20日(編集部撮影)

新ホテルとイベント、民間連携でにぎわい拡大へ

 環境整備と合わせ、まちのにぎわいづくりも進む。旧東急ハンズ跡地の解体や、来年1月閉館予定の「心斎橋OPA」など、再開発に向けた動きが続く心斎橋エリアでは、店舗・宿泊施設・事務所を一体開発する 「(仮称)心斎橋プロジェクト」も進行中だ。心斎橋交差点角に立ち、地下鉄心斎橋駅と直結。低層部には商業施設を取り込み、歩行者空間と相乗効果を生む。来年6月には入居の「THE GATE HOTEL 大阪 by HULIC(ザ・ゲートホテル大阪バイ・ヒューリック)」が先行開業予定だ。
 並行して道路空間を活用したイベントも展開。9月22~28日に開かれた「With 御堂筋」では、ベンチやテーブルを設けた滞在空間や、ストリートライブ、マルシェ、次世代モビリティ展示などが行われ、通過するだけの道から〝滞留する道〟への転換を後押ししている。

37年ターゲットイヤーへ

 制度、デザイン、イベント、民間投資。多様な取り組みが重なり合い、フルモール化のターゲットイヤーである37年に向け、御堂筋は「通る道」から「人が集う場所」へと姿を変えつつある。市建設局 道路空間再編担当課長の入谷琢哉さんは、「一部側道の歩道化が完了し、イベントでさまざまな使い方も試しながら、引き続き地域の皆様とまちの魅力向上に向け御堂筋のあり方を議論している。社会実験により交通への影響、通行や滞留、アクセスなどの空間の使い方を検証しながら、段階的に取り組みを進めていきたい」と話した。

9月に行われたイベント「With御堂筋」の様子=市交通局提供
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