大学院声楽科を出て音楽教員の資格を持つ高学歴歌手、知里がデビュー15周年記念曲として発売した「泣き笑い」を大阪・ミナミのライブハウスで開催された「大阪発流行歌ライブ」で詰め掛けた演歌・歌謡曲ファン約150人を前に熱唱した。

オペラやクラシックを歌うため声量には自信があるが、新曲は作詞・荒木とよひさ、作曲・弦哲也とバリバリの演歌コンビの巨匠が作ったラブソング。ゆったりしたテンポだが、手拍子と合いの手が似合う彼女の楽曲では初の曲調。「自分の引き出しにない曲だったので、最初頂いた時から〝どうやって歌おうか?〟と悩んだんです。センセイ方は〝テレサ・テンの世界観で〟とおっしゃるからますます分からなくなった。そこで思い切って肩の力を抜いておしゃべりする延長で歌ったら、弦先生が〝それでいいんです〟と」と今も不思議な手応えで歌い込んでいる。

カップリングの「最後の願い」は、伊藤美和の詞に彼女が麻生知里名義で曲を付け、本来のスケールの大きい歌い方を生かした叙情曲。「こっちの方が私らしいでしょ、ヘヘッ」とちょっと照れた。
「流行歌ライブ」では、得意の「イヨマンテの夜」(1949年、伊藤久男)を熱唱。飛び抜けた高音部もきれいに出せる声楽家ならではの大迫力に客席も思わず静まり返る迫力で魅了。「声楽やっているといきなり大声や高音は全く平気なんです。この仕事を15年やってきて〝皆さんに少しずつ伝わって覚えて頂いているな〟というこの感触が好きです」と笑顔。

一方で客席を丁寧にラウンドして回り、終演後のCD即売では笑顔で手売りしてサインや2ショット撮影にも応じるなど気さくな一面を発揮。この調子で全国隅々までキャンペーンで足を運ぶから、あちこちでファンの数がジワジワと増え、この日もそろいのTシャツを着てペンライトを手にした応援団が数多く駆け付けた。

「私、千葉県の出身なんですが全国を旅行するのが大好き。自分独りで衣装入リキャリーケースを押してどこにでも行きます。大阪のファンはストレートで、こうして新曲を出した時は反応を確かめるのに一番いい地。頑張って動いていると応援して下さる方も少しずつ増えて、付いてきてくれます」と軽い足取りで次の目的地に向かっていった。
(畑山 博史)