「若者の現実」を映す3日間の逃亡劇 大阪生まれ永田琴監督「愚か者の身分」公開へ

 第30回釜山国際映画祭のコンペティション部門で、北村匠海(27)、林裕太(24)、綾野剛(43)の主演3人が揃って最優秀俳優賞を受けた映画『愚か者の身分』が24日全国公開を前に、永田琴監督(54)の出身地・大阪市で完成披露などのキャンペーンを開催。

公開キャンペーンで来阪した永田監督(右)と林裕太

 週刊大阪日日新聞の単独取材に、最も若い受賞者で大阪キャンペーンにも出席した林は「僕自身、演技で賞を頂いたのはこれが初めてですごくうれしい。いろんな方がネットやテレビじゃなく映画館にいって集中して見て頂ける。反応が楽しみ」と喜びを語った。

過酷な暮らしをしていたタクヤ(右)とマモルは共同生活を始めるⓒ2025映画「愚か者の身分」製作委員会

 映画は新宿・歌舞伎町を舞台に、独居で金に困っている男性の戸籍を売買し収入を得ていたタクヤ(北村)とマモル(林)の2人が、違法な闇ビジネスから抜け出そうと組織を相手に抵抗する3日間の逃亡劇。2人を裏世界に誘った兄貴分・梶谷(綾野)の助けを借り逃げ続けるが、次々と行く手に迫る暴力が降り注ぎ危機に直面する。

協力してくれた女性に報酬を手渡すタクヤ(中央)。2人は次第に違法な世界に足を踏み込むⓒ2025映画「愚か者の身分」製作委員会

 永田監督は大阪市の生まれで関学大を卒業後、映画の世界を目指し上京。岩井俊二監督らの助監督を経て2004年「恋文日和」で劇場公開映画にデビュー。劇場映画やテレビ、ネットでのドラマ、CMなどで幅広く活躍している。

 最も描きたかったテーマについて永田監督は「現代の若者は、私たちの世代が思っている以上に生活が苦しい。ところがネット情報を得るテクニックだけは優れていて直ぐ飛びついてしまう。結果、気が付くととんでもない反社会的な組織や犯罪に関わってしまうケースが増えている。この映画は決してあり得ないドラマではなく、今の時代を映した作品です」と説明。

映画「愚か者の身分」のポスター

 それでもシビアなテーマの中でクスッと笑える緊張緩和の場面も随所に見られ、永田監督は「私が大阪人やからかなぁ? 全体を通じると息が抜けないサスペンスなので、どこかで笑えるシーンを入れておきたかった」といたずらっぽい表情に。

 林は「(北村)匠海君からずっと〝これは(林が演じる)マモルの物語なんだよ〟と言われていました。僕はずっと〝俳優は悩み抜くもの〟と考えてお芝居してましたが、永田監督はお母さんのような温かい方で、肩の力を抜いて直感的に演じる事の大切さを教えて頂きました」と成長への確かな手応えを感じた様子。

(畑山 博史)

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