8月4日から「テ・アラティニ先住民ウィーク」が開催されているオーストラリアパビリオンでは、朝から様々なイベントが行われている。
早速、現地へ行ってきたが、次から次へと登場する先住民の人たちのパワーとエネルギーに圧倒されそうだった。
6日にはアイヌのシェフとコラボも行う、オーストラリアで有名なシェフ、ノーニー・ベロさんは、カンガルーの肉を使ったタルタルを即興で料理して披露した。
オーストラリアとパプアニューギニアの間にあるトレス海峡のメリアム族コメット部族出身の彼女は、メリアム語を話し、その島で育った。「マコマナリ」というのがメリアム語で「こんにちは」という意味だと教えてくれた。
司会をしていたニックは「こんにちは」は英語で「グダイ」だと紹介していたが、これは単純に英語が訛(なま)っているだけで「Good Day」のこと。オージー英語は訛りがきついのだ!
カンガルー肉は尻尾の部分が一番おいしいらしいが、今回使う肉はそこではなく、お尻の辺りの肉。
それにアカシアの種など6〜7種類の調味料を混ぜてグラインダーでミックスしたマスタードソース作って、カットして細切れにしたカンガルーの肉とマスタードソースや薬味を混ぜ合わせてでき上がり。
マスタードソースにはビールを加えるが、それはビールが発酵していて、前日からそこにアカシアの種を漬け込んでおくと膨らんで混ぜやすくなるのと、苦味も加えることができる。
スライスしたさつまいもを油で揚げて、その上にソースと絡めたカンガルー肉を乗せて食べる。1つ食べてみたが、少しピリ辛で複数の調味料がバラエティ豊かな味を口内に解き放っていた。
今回のタルタルは生肉のまま食べるので、「オーストラリアバージョンの刺身ともいえる」という説明だった。また本来はサツマイモではなく山芋を使うのだが、ここでは手に入りにくいのでサツマイモで代用したそうだ。オーストラリアでは山芋の種類が多く、20種類以上あって、「採れる地域によってそれぞれに味や特徴が違う」という。
カンガルー肉は、たくさん血を含んでいて赤身が多く、脂肪分が少ないので食べやすく、牛肉に近いかもしれない。今回も肉の味はしっかりあったが、調味料や薬味とうまく調和していて食べやすかった。肉自体には甘みがあるので、ペッパーシードや酸味のあるピクルスなどが加えられていて、繊細な味になっているし、ペッパーベリーは紫色をしていて、料理の色を映えさせてくれている。
カンガルー肉は、調理しすぎると固くなるので火を通すときは注意が必要。カルパッチョやボロネーゼ、ステーキなどに向いているということだった。
ノーニーさんは、カンガルー以外にもエミューやクロコダイルなど色々な肉を使うので、先住民ウィークではオーストラリアの食材を使って、日替わりで違う料理を作る予定だ。ノーニーさんにとっては、カンガルーもエミューもクロコダイルも食材なので、彼らをみても「かわいい」とか「怖い」とは思わず、「おいしそう」と思うという。またそれらは野生ではなく、サステイナブルに牧場などで育てられたものを使っている。
彼女の育った社会では、ものを無駄にしないという文化があるので、欲しいものを食べるのではなく、必要なものだけを食べることが大切だといって、料理教室を締めくくった。
様々な調味料を混ぜ合わせ、カンガルー肉に向いた方法で調理する。素朴に見える材料でも風味や香りもあり、かなりリッチな味を生み出していた。無駄な食材を出さないことも大切。学ぶことの多い料理教室だった。