フィクションのはずが、現実ににじり寄る不気味さ
夏の恒例? 〝ビビりな記者が行く! 体当たり取材〟今回は怖がりな記者でも一人で行けそうなホラー展覧会「行方不明展」を訪ねてみた。でも、やっぱり心細いので「勉強のため」と言い訳しながら、新人の長澤拓記者(ニチニチでは珍しい若手、多分Z世代)を引き連れて取材へ行ってきた。

大阪メトロ本町駅から会場へ。すでに、古い地下道から不思議な雰囲気が漂っているのは気のせいだろうか。足取りが重くなるのを感じつつ、いよいよ展示会場へ。
気鋭のホラー作家の梨、ホラーエンターテインメントの会社「闇」、テレビ東京の大森時生プロデューサーが手がける展覧会場はすでに多くの人の熱気に包まれていた。展示は「ひと」「場所」「もの」「記憶」の4つのテーマで構成されている。どれもすべてフィクションなのに、本当に起きた出来事のような感覚に襲われる。


最初に目に飛び込んできたのは公衆電話。受話器の横に置かれた小銭が「最後に誰に電話をかけたのか」と想像をかき立てる。展示物は単なるオブジェではなく、見る者を不意に〝自分ごと〟へと引き寄せてくる。
行方不明者を探す張り紙や手紙、メモなどがたくさん展示されているが、多くは黒く塗りつぶされて名前や生年、大学名、警察署といった個人を特定できる情報は隠されているのだ。それがどこか身近な街で起こった事件のようなリアリティを放っている。


ここで重要なのがキャプションの存在だ。展示物のそばに記された物語を読むことで、不気味さが倍増する。私が文章に目を通している途中で、ふと気づくと長澤記者の姿が見当たらない。周りを見渡すと――展示の前で身じろぎもせず、文字を追う彼の姿があった。声をかけるのもためらうほど没頭していたので、そっとしておき、私もまた読み始めた。
長澤記者に感想を聞くと「とても面白い内容だった。フィクションが強調されていたが、現実なのではと錯覚した」と異世界に没入していたという。

新しいホラー表現を違和感なく受け入れる20代の彼の感覚は、昭和や平成の番組「あなたの知らない世界」や心霊写真集、きもだめしスポットといった〝直球の怖さ〟を見て育った私にはない感覚だ。世代の違いがくっきり出ていて、思わず苦笑いしてしまった。
「東京で好評だったので大阪でも試してみたいという思いで開催した。展示は一つひとつの作品にストーリーが用意され、読み解く力や想像力が求められる構成となっている。怖さが苦手な人でも物語や美術作品として楽しめる要素があり、『お化け』ではなく人間の内面に迫る『リアルな恐怖』を表現しているのが特徴」と事業部部長の桂潔さん。
フィクションなのか現実なのか、なんとも不思議で不気味な世界の体験だった。


行方不明展
A MISSING EXHIBITION
【会場】谷口悦第2ビル1階(大阪市中央区久太郎町3-5-26)
大阪メトロ本町駅12番出口すぐ
【会期】9月28日(日)まで 午前10時~午後7時
※最終入場同6時30分
【料金】大人2200円、小中高生1600円