大阪万博・ブラジル館は9月1日から5日まで、石油化学分野の総合メーカーBraskem社(本社・ブラジル)が製造しているサトウキビ由来のバイオプラスチックの展示を行った。

展示されているのは、サトウキビを原料に製造されるバイオプラスチックと、その製造プロセスだ。化石燃料から作られる従来のプラスチックの代替として、そのまま利用できるのが大きな特長となっている。
性質面では従来のプラスチックとほとんど変わらず、日常生活や産業用途でも遜色なく使用可能。利便性を損なうことなく環境負荷の低減につながるため、持続可能な社会づくりに向けた有望な代替素材として注目を集めている。

ブラジル館の展示室では、サトウキビからバイオプラスチックが製造され、さらにそれを活用した製品へとつながる過程を順を追って紹介している。原料から製品化までを一目で理解できるよう工夫されており、来場者にとって分かりやすい展示となっている。

バイオプラスチックの最大のメリットはカーボンオフセット。サトウキビが成長する際に、光合成を行い、空気中の二酸化炭素を吸収する。
バイオプラスチックを用いた製品の製造や最終的な廃棄の過程では、二酸化炭素を排出することになる。しかし、原料となるサトウキビが生育段階で吸収する二酸化炭素の量は、その後の工程で排出される量と同等かそれ以下とされる。このため全体としては、大気中の二酸化炭素濃度を維持するか、むしろ削減する効果が期待できる。


従来の化石燃料を使ってプラスチックを製造した場合は、化石燃料内に含まれる二酸化炭素を地下から掘り出して、それを燃やして空気中に排出し、製品を製造したり廃棄したりするときにもまた二酸化炭素を排出するので、結果として空気中の二酸化炭素の量は確実に増えてしまう。
一つ一つは小さいことでもこの差は将来的に大きな差となっていく。その上、バイオプラスチックは、既存のプラスチック製品の製造工程・仕組みをそのまま利活用できるので、新たに投資する必要もない。
簡単に使用できて、カーボンオフセットという概念で考えると、バイオプラスチックは二酸化炭素の排出量がゼロかマイナスになるという夢のプラスチックというわけだ。
展示室に敷き詰められた青い人工芝もこのバイオプラスチックでできていて、世界で唯一のカーボンゼロのフィールドホッケー用人工芝として、2024年のパリや2021年の東京オリンピックで採用され、持続可能な取り組みとして高く評価された。
また「GEL-LYTE™ III CM 1.95」というアシックスのスニーカーは、スニーカー内の中敷などにこのバイオプラスチックを採用、発売時から人気を博しているという。
ペットボトルにも使用されている例があり、リサイクルして何度でも使用できるペットボトルとして期待されていたり、海外ではバイオプラスチックが使われているオムツなどが販売されているという説明だった。




その存在や効果は一般にはまだ広く知られていないバイオプラスチックだが、業界内では既に周知の素材となっている。今後は環境意識の高まりを背景に、利用分野の拡大とともに普及が一層進むと見込まれている。
消費者がこのバイオプラスチックを使った製品で、最も身近で使用しているものは、コンビニなどで使うレジ袋。

使用量を減らすために有料化されたあのレジ袋には、このバイオプラスチックが使用されていて、多くの消費者が知らず知らずのうちにバイオプラスチックを利用し、環境保護に協力していたわけだ。気になる人は袋に印刷されているバイオプラスチックのマークを探してみよう。
バイオプラスチックの今後のさらなる普及に期待したい。