大阪で初となる大規模企画展「sakamotocommon OSAKA 1970/2025/大阪/坂本龍一」が9月27日まで、グラングリーン大阪うめきた公園内「VS.(ヴイエス) 」で開催されている。

会場には「バジェ」と呼ばれる音響彫刻が広々と配置されている。見慣れないその独特な姿は、どうやって演奏されるのか、どのような音が響くのかと、来場者の興味を大いに引きつけている。




また坂本龍一さん愛用のピアノが彼の演奏データを元に自動演奏され、その背景には本人の映像が流されている。このほかにも彼が個人的に収集していた書籍の一部を「坂本図書館」として棚に並べ、来場者が自由に見られるようにしていたり、真っ暗な部屋で彼の音楽に身を委ねてみたり、いくつかのインスタレーションも展示されていて、〝坂本ワールド〟を五感全てで体感できる展示会になっている。




18歳だった坂本龍一さんは、1970年に開催された大阪万博で、「人類の進歩と調和」をテーマに掲げた展示やパフォーマンスに触れ、多彩な音楽やアートから大きな刺激を受けた。
各パビリオンで流れる音楽の多くは、無調による前衛的な電子音楽だったが、「ペプシ館」では中谷芙二子さんによる霧の彫刻、クセナキスが「鉄鋼館」のために「Hibiki Hana Ma(響き・花・間)」を制作し、同じ会場にはフランソワ・バシェの音響彫刻が展示されていた。後に創作活動に深い影響を与えることになる出会いは1970年の大阪万博にあったのだ。

当時、注目を集め始めていたシンセサイザー電子音楽の世界も、坂本さんにとって大きな刺激となった。
再び大阪で万博が開催されるこの年に、若き日の坂本龍一さんが受けた刺激と、彼が遺したものを共有化する試みとして始動した「sakamotocommon」を通じて次世代のクリエイターたちへ届けられないだろうか、と考えたのがこのプロジェクトだ。
「sakamotocommon」(サカモトコモン)とは、坂本龍一さんの知的・物質的遺産のコモン化(共有化)を目指し、未来のクリエイターのために利活用することを目指しているもので、若い世代にとっては非常に貴重な体験ができる展示会だ。

坂本龍一さんは、完成した作品よりも、「プロセスが面白い」と常に語っており、制作中の作品にもスポットを当てたり、今回の展示会では次の世代のクリエイターが、何かしらのヒントを得て、そこから新しいものを生み出すというプロセスの途中だと考えることもできるという。
坂本龍一さんの自由な発想や枠を設けない創造性から刺激を受けて、新たなクリエイティブ作品が生み出されることが期待される。
会場内のショップでは、様々なグッズが販売されているが、その中には未発表音源を会場限定でLP盤として発売していたりもする。
〝Ryuichi Sakamoto: Playing the Baschet〟 は、同企画展の開催を記念し、坂本龍一さんがバシェ音響彫刻を演奏した音源を収録したLP盤だ。

この作品は、生前の2016年、2018年、2020年に坂本龍一さんが演奏した、バシェの音響彫刻の音源をまとめたもので、没後はじめてリリースされる未発表音源。1970年の大阪万博で18歳の彼が出会ったバシェの音響彫刻に、46年の時を経てふたたび出会い、演奏し、録音させてもらい、本人にとっても「宝物」になったというその貴重な演奏の結晶なのだ。数量限定販売。
関連イベントとして9月14日、午後7時からうめきた公園ローとハートスクエアうめきたで、「Ryuichi Sakamoto | Opus」を上映する。
「Opus」は、坂本龍一さんの最後のピアノ演奏を収めたフィルムコンサートだ。2022年9月、2年以上に及ぶ闘病生活の末、亡くなる半年前に行われた録音で、全身全霊を込めて8日間かけて収められた演奏がフィルムに映し出されている。全20曲が収録されていて、観覧無料、一夜限りのスペシャルプログラムとなっている。
チケット料金(税込み)は、一般2,500円、18歳以下1,100円、大学生・専門学校生2,000円。障がい者割引は1,100円(同伴者1人まで同額)。
詳しくはオフィシャルサイト(https://vsvs.jp/exhibitions/sakamotocommon-osaka/)へ。