生前整理のスペシャリストに聞いてみた
自宅に実家、「そろそろ片づけた方がいいかな…」と思いつつも、なかなか踏み出せない――そんな声をよく耳にします。
実は、断捨離は〝モノを捨てること〟だけではなく、〝これからの生き方〟を見つめる大切なきっかけでもあります。人生100年時代、今できることを、元気なうちに。生前整理のスペシャリスト金山佳子さんに、断捨離のハードルを下げるポイントを聞きました。
Q.親に片づけを促すと「〝死ね〟と言われているようだ」と怒られ、喧嘩になります。
A.「防災のため」と伝えると、受け入れやすくなります。
「片づけて」と言われると、親御さんはどうしても「死の準備」を連想してしまいます。でも、実際には暮らしを守るための行動でもあるんです。
高齢になるほど整理は体力的にも精神的にも負担が大きくなります。壁一面のタンスが地震で倒れてくる危険や、介護ベッドが入らないほどの物量など、防災や介護のリスクは深刻です。だからこそ、「何かあったときに困らないように」「転ばないようにスペースを空けておこう」と、日々の安心を守る視点から伝えてみてください。
親子で一緒に「何を残すか」「どれを手放すか」を話し合いながら進めると、自然と会話も増えて、関係もやわらぎます。
Q.「もったいない」「まだ使うかも」と思うとなかなか捨てられません。
A.捨てない断捨離も。おすすめは「メルカリ」
「いつか使うかも」「高かったし…」。そんな気持ちがあると、なかなか手放せないものですよね。でも、「誰かが使ってくれるなら」と思えたら、気持ちが少し軽くなるかもしれません。
そんな思いに手軽に応えてくれるのが、フリマアプリ「メルカリ」。若い頃に集めた趣味の品、置き物、着物のはぎれ、記念品など、思いがけない物に値がつくこともあります。出品をサポートしてくれる機能も充実していて、最短15秒で出品可能なものも文字が打てて、写真が撮れるなら、メルカリも使いこなせます。
売れたお金でランチに出かけるなど、小さな成功体験が片づけのやる気にもつながります。

断捨離は元気なうちに
孤独死の件数は年々増えており、交通事故の8倍ともいわれます。ご家族とのつながりが希薄になり、相続放棄で誰も関われず、遺品や財産がそのまま残されるケースも少なくありません。行政が葬儀や部屋の片づけを担う場面も増えており、私たちは弁護士と連携して、現金や通帳のリスト化、残されたモノの整理などをサポートしています。
現場でよく聞くのは、「元気なうちに話し合っておけばよかった」という声です。親子や兄弟で思い出を語りながら片づけを進めることができていれば、もっといい関係のまま見送れたかもしれない。そんな後悔に何度も立ち会ってきました。
これから高齢のひとり暮らしがさらに増えるなか、「まだ元気」と思えるうちに、自分の身のまわりを見直しておくことが大切です。断捨離は、モノの整理というより、「これからを安心して生きるための準備」だと思っています。
教えてくれたのは・・・
金山佳子さん
かなやま・かこ NPO法人「ここから100」代表。生前整理や、個人事業主の事務所の整理収納をはじめ、行政書士らと共に相続・空き家問題を解決する整理収納セミナーなどを定期的に開催。「終活」ではなく、キラキラした「生き活」を提案している。