コモンズ館Cにあるクロアチアパビリオンは、無数のパイプが垂れ下がっていて、外からみても何をしているのか全くわからない不思議なパビリオン。
そこで、パビリオン前で来場者対応をしていたスタッフに尋ねてみたところ、謎のパイプの意味がわかった。
クロアチは国内を大きく分けると5つの特徴を持つ気候エリアに分けることができる。
温暖湿潤気候、西岸海洋性気候、地中海性気候、温暖夏季海洋性気候、そして亜寒帯湿潤気候の5つで、これらは30度を越す海沿いの暑い場所もあれば、マイナス40度にもなる山間部の極寒の場所もあったり、とかなり幅広い気候帯を含んでいる。
そのためか、昨今の温暖化や気候変動の影響を感じやすく、様々な影響が出ているため、そのことを伝えようとしたのが先のパイプたちなのだ。
各気候エリアに温度などを計測する装置を10カ所以上の観測地点(計45カ所)に設置し、そこから観測データが30分ごとに更新され送られてきており、24時間継続的に記録され続けている。計測されたデータをリアルタイムで大阪の万博会場内にあるクロアチアパビリオンに送って来ているわけだ。
その情報を受けて、パイプの温度をクロアチアと同じ温度に自動的に調整するために、大量のパイプの上にはまるで「原子力発電所」のような機械、最先端技術冷暖房システムが設置されている。
ここで使用されているパイプの長さは13キロメートルもあり、そのパイプが水の壁を作り、3トン以上の水を使って温度調整しているという。パイプは4色あり、各色のパイプは違う温度に設定され、その中を流れる水の温度差で、パビリオン内の各場所の温度差を生み出しているのだ。
このシステムのおかげでクロアチアパビリオンでは、クロアチアの5つの違うエリアの温度をリアルタイムで再現し、日本にいながらクロアチアにいる感覚にしてくれている。
それぞれのエリアには、縦型のサーモモニターが設置されていて、その周りにいる人の体温や環境の温度を計測して色で表示している。それをみると今自分がいる辺りの温度が大体わかるよになっていて、エリアを移動すると周りの温度が変わるのがわかる。同時に自分がどの温度帯を一番心地良いと感じるかも確認できる。
モニターの下にはQRコードがついていて、スマホで読み取ると、自分の身体の熱を写したサーモグラフィー画像を確認できる。
パビリオン内の5つの気候ゾーンはそれぞれ熱感知カメラ(TICs)によって録画され、この動画はクロアチアパビリオンの入口にある大きなビデオモニター、パビリオンのウェブサイト、そしてSNSで写真のスライドショーとして、表示されるようになっている。
また同じプラットフォーム上で、気候多様性の重要性を強調している簡潔なメッセージも表示される。
このよう同館では、長期に渡り生態系と人間の文化を形成し、私たちのアイデンティティを定義づけた気候の多様性が強調されている。彼らはこの現象を気候多様性と呼んでいる。
されあに、パビリオンのウェブサイトと入口の画面での動画によって、このメッセージはクロアチアの特定のロケーションに結び付けられている。気候多様性に関するスローガンと並べて熱感知カメラで録画されたイメージをSNSに共有することで、パビリオンのメッセージを世界的に拡散することができるのだ。そうすることで、クロアチアの景色、パビリオンの社会的意味、そしてデジタル領域の間での気候多様性の連続した流れが形作られている。
気候変動の影響が及ぼす地球の未来に関する議論が世界中で行われているが、その多くの議論は未だに抽象的で、明確な将来を思い描いたものはない。だからこそ、このパビリオンでの体験を踏まえて環境問題を自分ごととして考えてもらうキッカケにしてもらいたいと語っていた。
また、クロアチアパビリオンでは季節を通して、日々絶え間なく変化する環境になっているので二度と同じ環境を繰り返すことはなく、来館者は来るたびに違う環境を体感することになる。そうすることで気候多様性の個人やコミュニティに対する大きな影響に関して考えてもらいたい、という思いを込めている。
最後に、パビリオンは組立式で、全てのモジュールがクロアチアで製造され、簡単に組み立てや分解ができ、一般的な輸送コンテナに積み込める寸法になっている。これはパビリオンの移動や様々なロケーションでの再度の組立を可能にしていることを付け加えておく。