壁面を彩る迫力の映像。その動きとリンクするように流れるBGMや効果音─。大阪市北区天神橋8丁目に、プロジェクションマッピングを活用し、幻想的で感動的な体験を楽しめる新感覚カフェバーが登場した。店の雰囲気を内装で変えるのではなく、映像で変えるという新たな着眼点が面白い。
すでに世の中にある要素を組み合わせ、全く新しい価値を創造する─。
ガラケーが主流だった時代にパソコンと電話を組み合わせたiPhone。肌着と発熱素材を組み合わせたユニクロのヒートテック…。現代のイノベーションは「技術革新」ではなく「新結合」にあるが、この新感覚カフェバー「THE HIDEAWAY Art M」は差し詰め、アミューズメントと飲食店の新結合といったところだろうか。
壁面に映し出す映像次第で、店内の雰囲気さえ変えることのできる同店。このユニークな店舗の仕掛け人は福島区に本社を置く不動産会社「水都」の北野憲二社長だ。
同社が所有する「天神橋8東」交差点角の4階建てオフィスビルを改装した店舗で、「築年数の経過した古いビルだったが、売却するほど困っていないし、潰すのももったいない。それならカフェをオープンしようと考えた」(北野社長)のがきっかけだ。
ただ、「ありがちな店ではつまらない」と考えていた北野社長。最初のアイデアとして「店内に道路から見えるぐらいの巨大な木を植えると面白いのではないか」とも考えたが、滋賀県で大型レストラン「THE HIDEAWAY FACTORY」を経営する若手デザイナーの(株)THE HIDEAWAYの森下直哉社長に影響され、プロジェクションマッピングを融合することに決めた。
工事は床を抜いて1、2階を吹き抜けにし、高さ約5㍍の壁面いっぱいに、プロジェクションマッピング用のディスプレイを設置。中央の長いテーブルにも映像を流せるようにし、客が全身で映像を体感できるようにした。
広さ約120平方㍍の店内は着席で24人、立食なら50人規模でも利用可能だ。加えて、映像を2階席から見下ろせる10人規模の特別席も設けた。
「コンクリート打ちっぱなしのままにした方が雰囲気が出たので、床を張る必要もなく、普段の内装工事より安く付いた」と北野社長。
オープン後はカフェバーに留まらず、思いもよらない使い道が広がっている。
すでにカスタムバイクショップと組み、バイクでのツーリングの映像を流しながらハーレーダビッドソンの展示会を開いたり、アートの映像を流して古着屋が期間限定のイベントを実施するなど貸し会場としての利用も増えてきた。
北野社長は「アイデア次第でいろんな使い方ができる。今後、本業の不動産セミナーをかつてない演出で開催するつもり」と話している。
場所は大阪市北区天神橋8─2─9。問い合わせは電話06(6867)7978へ。