守口市の市立大久保保育所跡地(同市大久保町)に今年6月、市内初の医療的ケアに対応した地域生活支援拠点「オールケアあゆむ」が開業する。
児童発達支援(未就学児)、放課後等デイサービス(小学生~高校生)、生活介護(18歳以上)、短期入所、訪問看護、相談支援事業を運営予定。整備に至った背景と今後の展望を取材した。

医療的ケア児、ここ10年で2倍に
地域生活支援拠点とは、障害者の重度化・高齢化や親亡き後を見据え、さまざまな支援を切れ目なく提供する場所や体制のこと。守口市では支援や機能を複数の事業所で分担する「面的整備」により、市内に4つの拠点を開設しているが、たんの吸引や経管栄養などが日常的に必要な医療的ケア児に対応できる拠点は今回の「オールケアあゆむ」が初となる。
医療の発達で日本は「世界一赤ちゃんが安全に生まれる国」になった。NICU(新生児特定集中治療室)で多くの命が救われるということは、医療的ケアが必要な子どもが増えていることも意味している。厚生労働省の推計によると、医療的ケア児はここ10年で2倍に急増。医療的ケアは看護師もしくは研修を受けた介護職員のみが対応できるため、保育園や児童発達支援、放課後等デイサービスなどでの受け皿が整っていないことが社会課題になっている。

医療的ケア児を積極的に受け入れ
「守口市においても医療的ケア児を受け入れることができる施設が不足していた。市が保有する未利用地の活用を検討するにあたり、障がい福祉課で真っ先に手を挙げさせてもらった」と話すのは、守口市役所の西尾浩樹健康福祉部長。同市は拠点の機能を担う事業所を公募型プロポーザルで募集し、オールケア守口が選定された。
同社は重症心身障害児・者や医療的ケア児・者を対象に障害福祉サービスを展開するオールケア・グループ(守口市)の企業。「行き場のない医療的ケア児・者を受け入れる」という信念のもと、同グループでは看護師・介護職員を積極的に採用。医療的ケアに対応できる専門スタッフの教育・育成に注力し、北河内・北摂エリアを中心に26事業所を構え、1500人を超える契約者が利用する「業界のパイオニア」だ。

施設ではなく、地域で共に暮らす
「どこの保育園にも〝ウチでは無理です〟と断られました。まだ3歳なのに、この子はどうなるのでしょう」。その言葉を発したのは、持病でインスリンポンプを装着している女の子のお母さん。発達に遅れはないが、医療的ケアが必要というだけで通っていた保育園を退園せざるを得なくなった。
同グループでは、自社で運営する児童発達支援で女の子を受け入れると同時に、看護師、保育士、セラピストでチームを形成。本来彼女が通うべき地域の保育園への訪問支援を開始した。インスリンポンプの取り扱いや、酸素吸入時の注意点などの説明を重ね、半年間にわたる地道な取り組みの結果、無事に保育園への入園が決まったという。

「どれだけ重度の障害があっても、子どもたちが施設ではなく、地域社会で安全に生活できる支援をすることが私たちの使命です」と語るのは、オールケア守口の吉田広美社長。「今回の拠点施設は包括的な役割を担うことになる。〝その人らしい人生を生きる〟〝地域の中で共に暮らす〟を実現するためにあらゆる資源をつないでいきたい」と熱を込める。
介護者にひと時の休息を
新たな拠点の土地は市が貸し出すが、建物の設計や建築、運営は事業者である同社が行う。「利用者様は寝たきりの方も多いため、天井を約3㍍と高くした。温かみを感じられる木造建築で明るく、開放的な空間になる。地域の子どもたちが宿題をしたり、本を読んだり、子育てイベントなどに使用できる地域交流スペースも設け、地域に開かれた拠点にしたい」と吉田社長は意気込む。
今回の事業運営において、吉田社長が特にこだわったのが医療的ケア対応の「短期入所」(ショートステイ)だ。「医療的ケア児の保護者は夜中に発作が起きれば吸引をするなど、付きっ切りで介護をしている。そんな保護者にこそ休息が必要。家族や友人と外食をしたり、映画を見たり、旅行に出かけたり、ショートステイによってリフレッシュできる時間を提供したい」と吉田社長は話している。

地域生活支援拠点「オールケアあゆむ」の開所に寄せて
守口市では、第3次守口市障がい者計画、第7期守口市障がい福祉計画、第3期守口市障がい児福祉計画において、地域生活支援拠点等施設の整備と充実を掲げています。障がいがある方が、住み慣れた地域で安心した生活を継続することができるよう、市内の社会資源を有機的に連携させる「面的整備」により、さまざまな支援を切れ目なく提供する体制を整えています。
この度、オールケア守口さんに開所していただく「オールケアあゆむ」は、医療的ケアを必要とする方々を受け入れることができる市内初の拠点施設となり、本市の障がい児・者施策は一層、手厚くなることが期待されます。
介護者の心身の負担を軽減する短期入所(ショートステイ)も医療的ケアに対応しており、これまで遠方の施設を利用せざるを得なかった方が、住み慣れた地域でライフステージに応じた切れ目の無い医療的ケアを含む障がい福祉サービスを受けられるようになります。
新たな地域生活支援拠点の運営を担うオールケア守口さんは、医療的ケア対応の障がい福祉サービスの提供に豊富な知見と実績があり、守口市としても非常に心強いパートナーです。同社と協力し、障がいのある方やそのご家族にとって、より柔軟で質の高い支援体制を構築してまいります。
