近畿大出身で青春時期を大阪で過ごした渋い二枚目俳優、升毅(69)が、大阪ミナミ・アメリカ村の「キノシネマ心斎橋」で主演映画「美晴に傘を」(1月24日公開)の先行上映会で、渋谷悠監督(45)と共に舞台あいさつした。
北海道の小さな町の自然を背景に、亡き夫(和田聦宏)の遺骨を納めに妻透子(田中美里)が2人の娘(日髙麻鈴、宮本凜音)を伴い、義父(升)の住む夫の実家を訪ねる。長女美晴は聴覚過敏がある自閉症で見知らぬ地の人と音に驚きながらも周囲の人々の温かい心遣いに次第に心を開いて行く。升は、妻に先立たれ、詩人を目指していた息子も失い、心を閉ざす天然ウニ漁師・善次を演じている。
朝一番の新幹線で大阪入りした升は「僕は東京生まれなんだけど中学、高校、大学の時期を大阪で育ちました」と話し、「この作品が日本初、世界初で先行上映されたのが〝心の故郷〟大阪ですからうれしい」と大阪弁を交えながらうれしそう。
撮影は北海道の余市町に俳優やスッタフが泊まり込んで約2週間で撮ったそうで、ウニ漁のシーンではわずか3、4分間の指導だけで実際に船を操縦して撮影。潮に流され、なかなか監督の指示する海域に船を固定できず「〝そんなんでけへん!〟っちゅうねん」と得意の大阪弁で説明すると客席は大爆笑。
脚本も担当した渋谷監督は東京出身だが高校はインターナショナルスクールを出てすぐ渡米。この原作は米インデディアナ州のバーデユー大学大学院時代に創作し英語で書き下ろした。「この映画の中で善次さんが〝人は生まれた順に死ぬのが一番の幸せ〟という言葉を出す。一方、障がいを持つ娘を持つ透子さんは〝この娘より1日でも長く生きたい〟と話す。こうした生命に関するさまざまな考え方がモチーフになっています」と作品の見どころを紹介した。
(畑山博史)