「いま健康であることを大切に」ベトナム戦争の結合双生児「ベトちゃんドクちゃん」
11月14日、結合双生児ベトちゃんドクちゃんの、ドクさんが門真を訪問。自身のドキュメンタリー映画「ドクちゃん-フジとサクラにつなぐ愛」の上映会と、翌15日には門真市立みらい小学校と第四中学校にて講演会が開催された。
映画はベトナム戦争時にまかれた枯葉剤の影響で、1981年に下半身がつながった「結合双生児」として誕生したグエン・ドクさんの半生を辿るドキュメンタリー作品。世界中が注目した分離手術と、兄ベトちゃんの死を乗り越え、夫として父としてたくましく働くドクさんの様子が映し出される。
現在43歳のドクさんは結婚18年目。2009年には人工授精により男女の双子が誕生し、分離手術やその後の支援に関わった日本への感謝を込めて長男はフジ、長女はサクラと名付けられた。作中では子どもらとともに枯葉剤被害者のリハビリ施設や、ホーチミン市内の戦争証跡博物館を訪問。戦争被害の当事者として平和の大切さを我が子に語り継ぐドクさんと、父親を見つめるフジさんとサクラさんの視線が印象的だった。
日本は戦後79年を迎え、戦争を知らない世代が増えている。未だ後遺症と闘いながら、より多くの子供たちに世界平和と健康の重要性を語り継ぐメッセンジャーとして松葉杖を支えに来日し、講演活動を続けるドクさんの現在の暮らしや想いについて話を聞いた。
―現在はどんな生活を送っていますか?
朝7時から16時まで公務員として病院で働いています。ホーチミン市内の戦争証跡博物館で日本からの旅行者との交流会や、広島国際大学の客員教授として講演会も行っています。日本では分離手術成功後は順調で裕福な生活を送っているイメージですが、実際は体調が優れず、10回以上手術を繰り返しました。国からの保証もほぼなく生活は厳しい。健康の問題を抱えながら、一家の大黒柱として頑張っています。
―ベトさんと結合している写真を子どもたちに初めて見せた時の反応は?
特に驚きませんでした。自分のお父さんはこんな感じだったんだな、と淡々と受け入れたようでした。ただ、私の活動や仕事を振り返り、自分たちももっと頑張ろう!と思ってくれたようでうれしかったです。フジは気が強いのですが心配性で「大丈夫?」といつも気にかけてくれます。サクラは私のことが大好きで、昔はよくキスをしてくれたんですよ(笑)。
―お腹の中の子どもが双子だと分かった時、心配だったのでは
妻と「何があっても、どうなっても大丈夫」だと決意できるまで話し合ったので心配はありませんでした。かけがえのない宝物です。
―枯葉剤には遺伝疾患やがんなど後遺障害が指摘されていますが、日々どんな気持ちで過ごしていますか?
いつまで元気でいられるか分からないけど、今とりあえず健康であることを大切に、あまり暗いことは考えないように過ごしています。一番欲しいのが健康。一番大切なのが健康です。
―日本人へのメッセージをお願いします
より沢山の人に私のことを知ってもらえれば、おのずと戦争の悲惨さが分かるはず。日々の勉強を頑張るのも、将来的には平和につながる可能性もある。人それぞれ出来ることは違うが、平和に向けてよく考え、行動してほしいです。
講演を聞いた生徒たちの感想
第四中学校 三年 𠮷岡彩葉
ドクさんの話を聞くまでは、ベトナム戦争のことも、枯葉剤のことも知りませんでした。ドクさんの話を聞いて、初めて知れたし、より一層戦争について考えられました。私は戦争を経験したことは一度もないけれど、恐ろしさがとても伝わってきました。きっと、その戦争を経験した人たちや、そのせいで亡くなった人たちはもっと恐ろしかったと思います。猛毒が振りまかれていると分からずに井戸水を飲んでしまったり、育てたものを食べてしまうのも本当に恐ろしいです。ドクさんの、皆に戦争について知ってほしいという思いは伝わったと思うし、それを広めていこうと思いました。
第四中学校 三年 長尾綺星
私たちは今、色んな選択ができて、そのせいでたくさん迷うこともあるけれど、それが幸せなんだなと思いました。ドクさんが言っていた、私たちが今するべきこと「しっかり勉強して仕事をして人の役に立つ」。当たり前だけれど、それを大切にしたいです。
第四中学校 三年 上杉彩葉
事前学習でも少し勉強したのですが、枯葉剤によって沢山の命や苦しい思いを持っている人たちが今もいることは全員が知る必要があると思いました。平和について考えることで世界に目を向け、自分の考えを見直すきっかけになりました。ドクちゃんが言っていたように、他人のためでなく自分のために頑張る!今を大切に生きようと思いました。