シンガー・ソングライターで第59回日本レコード大賞(2017年)新人賞の中澤卓也(29)が、今月14日㈯午後に京都・岡崎のロームシアター京都サウスホールで今年の弾き語りツアー締めくくりのコンサートを開く。「来年は30歳。1月には3年ぶりに新曲も出ます」と飛躍を目指す。
7年前に演歌歌手としてデビューし、甘いマスクと伸びやかな高音、しっかりと歌詞を届けられる滑舌の良い歌い方で、演歌ジャンルから唯一のレコ大新人賞といきなりスポットライトが当たった。同賞は翌年から毎年辰巳ゆうと、新浜レオン、真田ナオキと男性演歌歌手の受賞者が相次ぎ「演歌第七世代」として注目され、中澤もその先輩格としてトップランナーへ押し上げられた。
しかし、思わぬ低迷期も味わいデビュー以来所属した日本クラウンを3年前に離れ、心機一転タクミレコードへ移籍。自身の心境と重なる新曲CD「陽はまた昇る」を同年に出し、ライブ活動に主戦場を移し全国を回っている。タクミレコードの親会社「タクミ商事」は日本を代表する少量多品種半導体の販売会社。心強い全面バックアップを受け、今年はバンドツアー3カ所、演歌・歌謡曲ツアー7カ所、そして弾き語りツアーが3カ所。師走の京都が全体のフィナーレとなる。
きっかけはシンガー・ソングライター、斉藤和義(58)のギター一つの弾き語りツアーを見て感動したことから。中澤自身が幼い頃にギターで曲作りや歌をはじめ、その後ドラムやキーボードにも挑戦して音楽の領域を広げてきただけに、そうした王道を行きマルチな活躍をする斉藤は憧れの存在。
「〝格好いいなぁ〟と胸に響き、自分でもやってみたくなった」と明かす。公演では第1部をフォークソング時代に生きる主人公を中澤が演じる芝居仕立て。第2部は独りでオリジナルを弾き語る構成。「おこがましいんですけど、斉藤さんの音作りの姿勢を肌で学ばせて頂いている。ギター以外のいろいろな楽器を演奏するようになって、自分で歌っている時にバックバンドの方の一つ一つの音がキチンと体に入ってシンクロしてくるようになった」と研ぎ澄まされた感覚を身に付けた。
マルチな彼のもう一つの顔はカーレーサー。自身がステアリングを握るのはもちろん、今年はCSテレビ「GAORA」でストックカーレ-スの実況アナを経験した。ストックカーとは外見は市販車だがエンジンや足回りはパワーアップし改造した車を指す。全米各地で行われているレースのビデオ映像を、中澤が実況中継し解説者と共に熱戦を伝える。「まず英語実況のテープを見て細かい固有名詞や状況説明をチェックし日本語実況音声を作る。自分がレースする上でとても勉強になり楽しいです」と笑顔に。
「楽器演奏とカーレースは似ている」と感じている。どちらも両手両足に目と耳。すべてを駆使して操る。車も数えられないほどのシフトチェンジや加速減速がある。楽器と同じく、全身の感覚を同時進行で研ぎ澄ませて働かせ動く肉体と感覚のコラボが要求される。中澤は「どちらも一つ一つ克服しながら前に進むタッチが好き」とうなずいた。
1月には2年半ぶりに新曲「青い空の下」が出る。作曲は17年のデビュー曲「青いダイヤモンド」を書いてくれた師匠の田尾将実。作詞は石原信一、編曲・井上鑑とヒットメーカーが集まった。歌謡曲でもポップスでもない新しい雰囲気のバラード。
カップリングは自身で作詞作曲した「歌旅ーウタタビー」。弾き語りライブ用に同じように書き下ろした「東京」は、新潟から歌手を目指して上京した自身を重ね「僕もプロ歌手を目指して上京し10年。新潟からあこがれていた時期は単純にキラキラとしたイメージも、実際に住むと傷付いたり喜んだりとさまざまに街と交わり恋してしまう。そんな思いを歌にしました」と話す。発売と合わせて関西では1月15日「大阪発流行歌ライブ」(アメリカ村ライブハウス「BIGCAT」午前11時半開始)への出演も決まった。
さまざまな紆余曲折をへて、支えてくれるファンへの思いを「スポットライトが当たった時も、落ち込んでもがき苦しんでいる時も変わらず応援して頂いたファンのおかげで今がある。感謝しても感謝し切れない」と表情を引き締めた。
(畑山博史)