ブーム終焉後も繁盛する〝唐揚げ専門店〟の秘訣

 唐揚げ店の倒産が急増。そんなニュースを目にすることが多くなってきた。コロナ禍の巣ごもり需要もあって〝唐揚げ専門店ブーム〟が起きたが市場はあっという間に飽和状態になった、その一方で、「全く影響ない」という店もある。例えば、大阪市城東区にある「からあげ組 蒲生四丁目店」だ。繁盛し続ける秘訣を取材した。

 同店は大阪メトロ「蒲生四丁目駅」の南側にある古びた商店街の端っこに店を構える。人通りはあるが、地元の人しか通らない路地裏にある。メニューは9割9分が唐揚げで、他のメニューで勝負をする気はないようだ。

 とてもダンディーな店主の高倉さん。話し出すと口調はやわらかだ。前職は大阪の北新地で25年ほどバーテンダーをやっていたという。自慢の唐揚げはバーで評判だった一品らしい。周囲から「おいしい」と言われるのが嬉しく、味の研究にハマり、ついに唐揚げ専門店を出した。おいしさの秘訣は、イタリアンのテイストが入っている点らしいが、それ以上の詳細は企業秘密とのこと。

 唐揚げ専門店として独立開業した時、すぐ大きな壁にぶつかったという。それはバーの常連さんから「メチャクチャな味やで」と指摘されたこと。要するに、今までは揚げたてを食べてもらっていたが、家に持って帰り冷めた状態で食べると味は全く違っていたのだ。そこで「冷めても美味しさを保つにはどうしたらいいのか?」と研究に研究を重ね、納得いくまで奮闘した。結果、今では「冷めてから食べてみて」と笑顔で答えるレベルになった。この味を知った方が再び「おいしい」といって再訪してくれるのがたまらないようだ。新規客の獲得より、目の前の客が喜ぶ顔を大切にしている。

 世間では、「唐揚げブーム終了」なんて言葉を耳にするが、同店には殆ど影響はない。唐揚げに魅せられた男が「こうやったら、もっとおいしく」「もっと食べやすく」をただひたすらに考えているからだろう。そして味は常にアップグレードされている。商売繁盛の秘訣は「どや!うまいやろ」と本人が料理を楽しむことに尽きると、取材を通し改めて感じさせられた。

■からあげ組 蒲生四丁目店/大阪市城東区今福西1丁目9−22