若い上方落語家の登竜門とされる「第10回上方落語若手噺家グランプリ」決勝が、大阪・南森町の定席館「天満天神繁昌亭」で開かれ、入門10年の笑福亭笑利(40)が優勝、賞金40万円を獲得した。準優勝は同じ笑福亭一門で入門16年の呂好(43)で賞金10万円。第3位は同7年の桂笑金(31)と公表されたが、当初から賞金は無し。
笑利は京都府宇治市出身でNSC(吉本総合芸能学院)大阪校26期生。2004年春卒業の同期生には「かまいたち」「藤崎マーケット」「アインシュタイン」河合「天竺鼠」「アキナ」山名「和牛」(今春解散)など人気のお笑いコンビが並ぶ。笑利は卒業後10年30歳になった14年9月にパペット落語で知られる笑福亭鶴笑(64)に入門。噺家としては遅いキャリアをスタートした。
これまで「20カ月連続古典落語根多下ろし公演」に取り組むなど地道な活動を続け、このコンテスト予選出場5回目で決勝進出も3回目だったが入賞結果は残せていなかった。そこで今回は「前半4人目という出番も良し。強い人ばかりだけど、どうしても勝ちたかったので…」と演題を創作落語「或る夏の出来事」と曖昧なままにとどめ決勝戦当時まで内容を熟考。前々から温めていた〝インバウンド〟の真の意味を絡めた展開に仕上げ、「最後のオチが出番前にやっと決まりました。〝こういう感じかな?〟と思い描いていた新作がうまくハマりました。ホンマに捨て身だったんでメチャうれしい」と感無量の表情。
所属の吉本興業は、2大スター「笑福亭仁鶴・桂三枝」で昭和の上方落語界を席巻。現在でも上方落語協会の笑福亭仁智会長や桂文珍、次世代の柱とされる林家菊丸、桂かい枝などを擁するが「漫才に比べ若い世代が育っていない」とされる。笑利は「吉本落語を担う新世代としての覚悟は?」と問われ、やや戸惑った表情を浮かべながら「「まずコレを目標にしてきましたから…。1回だけ決勝に出して頂いたNHK新人落語大賞もそうですけど、今後は取れる賞は全部獲りたい」と意欲宣言。
準優勝の呂好は出番トップのハンデをものともせず古典「三人上戸」を自分流にアレンジし酒癖の悪い酔っ払いを好演。3位の笑金は創作「ミスター・スメルバズーカ」で盛んに腹をポンポン叩くしぐさで会場から最も笑いを取った。
同グランプリは今回10回目の区切りでひとまず終了。来年からは同じ寺田千代乃上方落語若手噺家支援基金の助成を得て、新たな形でのコンテストがスタートする予定。仁智会長は「今やコンテスト出場者は繁昌亭、喜楽館の定席ができてから世代になりました。私ら若い頃は師匠から〝100のけいこより1回の高座〟と言われてきたが、今の若手は高座が増え皆キャラクターが立っている。これからも研さんを積んでほしい」と講評した。
(畑山博史)