大阪天満宮天神筋から興門(こうもん)小路へ入ってすぐ、開業46年目を迎える「珈琲館吉田」は駄菓子をお供にコーヒーが飲める純喫茶。ランチのカレーセットも人気だという。
扉を開けるとどんつきに、ストーブに乗せたコーヒーポットが湯気を立てている。壁一面のブロマイドや絵画、書、存在感を放つ信楽焼のたぬきなど、道具箱をひっくり返したような店内は、開業当時のそのままだという。昭和、平成、令和と46年間、改装しなかった一番の理由は「これまで来てくださったお客さまが、いつお見えになっても、当時の思い出がここに残っていれば喜んでくれる」のが嬉しいからだとオーナーの吉田さんはいう。「本当は…改装資金がないから」と屈託なく笑う。
友人宅を訪れるように扉を開ける常連客も多く、ユリの球根の差し入れに同店を訪れた常連客のsayuriさんは「洒落たカフェはいくらでもあるけれど、珈琲館吉田はみんなの心の拠り所、癒やしの場ですね 」という。
事件を起こしたり自死する人のニュースを新聞やテレビで見聞きするたびに「うちのコーヒーを飲みに来てくれたら良かったのに」「周りに彼らの話を聞く人が居たら良かったのに」と心痛めている吉田さん。
「僕は毎日シャッターを開けてお客さんを、待つだけ。流行りを追いかけることなくこれからも続けたい」と優しく語る。
■珈琲館吉田/北区天神橋1‐9‐11/電話06(6352)2908