【円滑な親子関係(4)】買ってきた洋服 なぜ、着てくれないの?

コミュニケーションライター/黄本恵子

 以前、中学生の息子さんを持つお母さんがこんなことをおっしゃっていました。

 「子どもに洋服を買っても、『なんか嫌』と言って着てくれないの。一緒に買いに行ったら、『なんでこんな地味なのを?』という服ばかり選んで、理解できない」

 このように日常生活で子どもとの感覚の違いに戸惑うこと、ありませんか?

 それは、脳の〝優位感覚〟が違うからかもしれません。

 私たちは目や耳、皮膚などの感覚器官を通して、脳に情報をインプットし、整理します。その際、人それぞれ優位に働く感覚があります。それは、親子であっても異なるのです。

視覚・聴覚・身体感覚 あなたはどのタイプ?

 お気に入りの物を他人に説明するとき、あなたはどんなことを重要視して伝えますか? 次の3つから選んでみてください。

① デザイン・カラー・形状

② 音声・音質、世間の評判

③ 肌触り・重さ(軽さ)・匂い

 ①は視覚優位タイプ。絵や映像など視覚的な要素が優位に働きます。オシャレな人が多いです。脳の中で絵や映像を思い描きながら話すので、早口で、体の動きも早め。考えるとき視線は上に向きがちです。
 会話では、「話が見えない」「~なように見える」など視覚的な表現を好みます。

 ②は聴覚優位タイプ。音や、耳から入る言葉など聴覚的な要素が優位に働きます。言葉をとても大切にするので、論理的に話そうとする傾向があります。話すスピードは普通。考えるとき視線は横左右に動きがちです。
 会話では、「今のは胸に響いた」「~なように聞こえる」など聴覚的な表現を好みます。

 ③は身体感覚優位タイプ。手触りや肌触り、匂い、味覚など身体感覚的な要素が優位に働きます。体の感覚や感情を味わいながら判断します。なので、話すスピードや体の動きはゆっくりです。考えるとき視線は下に向きがちです。
 会話では、「じーんときた」「腑に落ちない」「~な感じがする」など身体感覚的な表現を好みます。

 冒頭でお伝えしたお母さんは、トレンドに敏感でとてもオシャレ。早口で話す、まさに視覚優位タイプ。息子さんは、お母さんの買ってきた服を「肌触りが良くない」「重苦しい」など言うのだとか。…どうやら息子さんは身体感覚優位タイプのようです。

 優位感覚のことをご説明したら、とても納得されていました。普段のコミュニケーションでも思い当たることがたくさんあるようです。

 優位感覚の違いが分かると、子どもとの感覚のズレに対する理解が深まります。

 コミュニケーションの際は、子どもの優位感覚に合わせて伝える言葉や表現方法を変えると、こち
らの言うことを納得してもらいやすくなりますよ。学習も、最初の取り掛かりのときなどは優位感覚別で工夫すると、理解のしやすさや速度が変わります。

コミュニケーションと学習のポイント

視覚優位 → 映像を見せる、お手本で示す。図や絵を描く。大事な箇所は色ペンやマーカーを使う。

聴覚優位 → 理論や背景など丁寧に対話しながら説明する。声に出しながら耳で聞いて覚える。

身体感覚優位 → 早口での説明は避ける。ボディランゲージ、ボディタッチなど体を使って伝える。実際に書き写して覚える。

黄本恵子さん

黄本恵子(きもと けいこ)大阪市出身。1980年生まれ。関西大学社会学部卒業。心理学について学びを深め、人間関係に悩む人々のカウンセリング業務に従事。その経験を活かし、家族間や男女間のコミュニケーションについての記事を大手WEBマガジンにて執筆。ビジネス書の編集・執筆協力にも多数携わる。米国NLP協会認定 NLPマスタープラクティショナー。
〈メディア出演〉ニュース番組『新・情報7daysニュースキャスター』に出演。「高齢者の親に免許返納を促す伝え方」についての記事が反響を呼び、取材を受ける。朝の情報番組『ビビット』に出演。「2歳児ができること」について紹介した記事が取り上げられる。