【対談シリーズ】俳優と学習塾代表の滑らない話Ⅱ

俳優 東ちづる × 個別指導キャンパス代表取締役 福盛訓之

 〝笑う門には福来る〟。新教育総合研究会「個別指導キャンパス」の福盛訓之代表が、各界の人たちと語り合う対談シリーズの12人目は、俳優のほか社団法人Get in touchの理事長としてボランティア活動にも力を尽くす東ちづるさん。

〝違う〟ということに関心を持ってほしい(東)
教育の現場にも通じるものがある(福盛氏)

俳優 東ちづる
あずま・ちづる
 1960年生まれ。広島県出身。ドラマ、司会、コメンテーター、講演、出版など幅広く活躍。ことし3月、プレゼンテーションイベント「TEDxKyoto」にスピーカーとして登壇。7月には「妖怪魔混大百科(ようかいまぜまぜだいひゃっか)」(ゴマブックス)を出版。現代風にアレンジしたメジャーな妖怪からオリジナル妖怪まで61体を自ら描き、社会風刺も交え解説している。

福盛 俳優業をしながらボランティアにも積極的で、社団法人「Get in touch」を立ち上げられました。

 今の社会は、高齢者や障害者、重い病気になると自分らしく生きられません。多くの我慢や諦めを強いられます。そんな社会を変えたかったのです。シンポジウムや公演では、意識の高い人ばかりが集まります。それも大切ですが、「社会は変わらない」、「自分には関係ない」と感じている人たちを巻き込むにはどうすればいいかを考えていました。そうした時に、東日本大震災が起こりました。避難所では、普段から生きづらさを感じているマイノリティの人たちが、より追い詰められてしまう現実がありました。車椅子の人が入れない、目や耳が不自由な人が配給物資をもらい損ねる、障がい者がいる家族が入ることを遠慮してしまうなど、信じがたいことが起こったわけです。でも、そうしたことはニュースにはなりません。共生社会の実現と言いながら、社会が不安定な状態に陥ると、本当に困っている人が取りこぼされてしまう現状に居ても立っても居られなくなりました。そこで、どんな状況でも、誰も排除せず、全員が繋がれる社会をめざして立ち上げたのが「Get in touch」です。たくさんの人を巻き込めるように、アートや音楽、映像、舞台などワクワクするエンタテインメントを通じて、「すでに私たちは一緒に生きているんですよ」を、可視化、体現化する活動を行っています。ずっと「これでいいのかな」と悩んでいましたが、東日本大震災でスイッチが入った感じです。

個別指導キャンパス代表取締役 福盛訓之
ふくもり・としゆき 
 1973年、大阪市出身。大学在学中の19歳で起業。96年に新教育総合研究会「個別指導キャンパス」(大阪市北区)を設立。個別指導塾を全国約350教室で展開している。第21回稲盛経営者賞第1位、第1回大阪府男女いきいき事業者表彰優秀賞、紺綬褒章など受賞多数。

福盛 ともすれば重くなりがちなテーマを楽しく表現されています。

 障害や違いは、ネガティブなものとして捉えられがちです。本人の気持ちとは関係なく、社会が「違う=気の毒、かわいそうな人」にしています。それを変えたいのです。〝違う〟ということに関心を持ってほしいし、だからこそできるパフォーマンスもあります。ただし、障害のある人が頑張っているだけの内容には絶対したくありません。厳しいオーディションを通過した一流の人たちによる、高度な内容にこだわっています。パラリンピックと同じスタンスです。

福盛 「まぜこぜの社会」がテーマですが、どういう意味でしょうか。

 食材ごとに持ち味を生かした下ごしらえをして、最後に混ぜ合わせることでおいしくなる「混ぜご飯」のイメージです。ただ一緒にする「炊き込みご飯」ではなく、人それぞれの特性を生かした配慮をすることで、多様性社会が構築できるという意味です。

福盛 さまざまな特性を持つ子どもが集まる、教育の現場にも通じるものがあります。

 教育にこそ、絶対必要ですよね。学校もマジョリティの人たちがつくってきたシステムです。でもマイノリティに合わせる方が大切。社会的少数者が生きやすければ、全員が生きやすくなります。教育現場は、子どもたちが間違っても失敗してもいい場所。それが今は逆になっている気がします。

福盛 妖怪を主人公にした書籍「妖怪魔混大百科(ようかいまぜまぜだいひゃっか)」を出版されました。妖怪それぞれに用意された、現代風のオリジナル物語がとても面白い。

 芸能界にいる者は、政治的・社会的な発言をするべきではないという風潮があります。それでも私は報道出身ですし、おかしいと思うことは言うべきだと考えています。黙っているのは傍観者と一緒ですから。だから私の代わりに、妖怪に言いたいことを言わせてみました。61体の妖怪たちが、子ども目線で多彩なメッセージを代弁しています。

俳優 東ちづる × 個別指導キャンパス代表取締役 福盛訓之

福盛 大人が読むと、子どもに対してどう接するべきかという気づきがあります。

 そこは意識しました。例えば「子泣きじじい」のお話。子どもが生まれた時は、あなたが生きているだけで嬉しいのと思っていたのに、いい学校に行って欲しいなど、つい親の期待を一身に背負わせてしまいがちです。そういうことに気づかせる妖怪に仕立てました。物語なら説教臭くならず、楽しく読めます。

福盛 東さんは色々な夢を叶えています。秘訣を子どもたちにお願いします。

 とにかく自分の頭で考えることです。ネットで検索しても、それをすぐに信じない。検索をしたら、思索をするのです。そして、考えがまとまっていなくても頑張って言語化してください。言葉が難しいなら絵でも写真でもいい。とにかく伝えようとすること。もし、伝わらなかったら理由を考えてください。時間はかかるかもしれないけど、表現のツールをいっぱい持ちましょう。

福盛 中高生から子育て世代まで、とても参考になる意見をありがとうございました。