【大阪版】志望校の選び方 大学合格実績以外で注目するポイントとは?

 何を基準に受験校を選びましたか?─。1位は「入試難易度」。次いで「進学実績」「交通の便」(駅からの距離や送迎バスなど)。2017年に開成教育グループの生徒に行ったアンケートの結果ですが、大多数は自身の学力に応じて受験校を選ぶと思います。しかし、同じ偏差値帯には複数の学校が存在します。そんなときは、何を基準に選べばよいかを考えてみましょう。
(開成教育グループ 上席専門研究員 藤山正彦)

大学合格実績では教育力は見えない

 東京大や京都大など国立最難関の合格実績を誇る中学、高校があります。関西では東京、京都、大阪の旧帝大に神戸大を加えた「東京阪神ランキング」があり、全国区では「難関10国立大ランキング(旧帝大7つと一橋大、東京工大、神戸大)」がメジャーです。
 このレベルになると中高の受験難易度と大学合格実績に高い相関があり、アンケート1位の「入試難易度で学校を選ぶ」というのと、第2位の「進学実績で選ぶ」が同じになるわけです。

 ただ、これはあくまで統計的な結果。難関中高に行かなければ必ずしも最難関大に合格できないわけではありません。実際に偏差値の低い学校から最難関大に進学する生徒も珍しくありません。
 それはさておき、最難関の次ランクの中高では、同じような偏差値でも進学実績が大きく異なります。その理由は卒業生数の差。
 例えば2023年度の大教大付属池田の東京阪神合格は71人。府内163校中9位ですが、同校は1学年が160人しかいないので占有率では5位になります。一方、近大付属は合格28人で府内17位ですが、卒業生は1003人もいるので占有率は28位です。
 大学との系列関係や目指す方向でも進学実績に差が出ます。例えば、関西学院千里国際は東京阪神が2人、10難関国立大は4人の合格に留まりますが、毎年約100人の卒業生のうち、50人以上は関西学院大に進学、30人は海外の大学に行くので、そもそも国内の国公立大を志願する生徒が少ないと考えられます。
 立地の差もみられます。わかりやすいのが卒業生300人台の北野、天王寺、茨木の3府立高です。高校入試の難易度はこの順番ですが、東京阪神の合格者数は北野172人で府内1位、天王寺137で3位、茨木145で2位です。これは天王寺の生徒が入学後に頑張らなかったわけでなく、同校の生徒は大阪南部居住者が多いため、大阪公立大に多く合格しています(北野32、天王寺44、茨木27)。
 こう見ると、大学合格実績だけで学校の教育力を計るのは難しく、ましてや関関同立などの私立大になると一人で複数回合格できるため、優劣の判断がますます比べにくくなります。そんなときは、学校のホームページやパンフレットを見比べてみましょう。進路実績の表現の仕方から志望校が「どのような進学に力を入れているか」「どのような進路を目指す生徒に入学してほしいか」が見えてきます。例えば、海外の大学を目指すなら、その実績を大きく打ち出している学校に行くのが近道でしょう。

便利な駅近がいいの?

 受験生の保護者に「通学時間はどの程度が限界ですか」と質問されることがあります。一例ですが、大教大付属池田中の募集要項には「90分以内で通学可能な方」と記載されています。家から90分となると、毎日通学に往復で3時間を費やすわけですから、6年間では膨大な時間になります。私はこの質問には「子どもの体力と学校の魅力とを比べ合わせて考えてみてください」と答えています。
 駅近の学校は便利に思えますが、駅から遠くてもスクールバスで学校まで運んでもらえる方が楽で安全ですし、大抵そのような学校は緑に囲まれ、グラウンドも広いという魅力も。自転車通学が認められていない学校もあるので説明会などで確認しましょう。

通学時間も重要な要素 ※イメージphoto

学校の規模から見えること

 府内の通信制以外の高校で2023年度の卒業生が最も多いのは近大付属の1003人。2位は大阪産業大学付属756人、3位は男子校の興國733人と続きます。半面、卒業生100人未満の高校は12校(公立3校、私立9校)です。

 大規模校は部活動の種類や人数が多く、同じ科目や教科に複数の先生がいるので質問しやすいメリットがあります。小規模校なら先生と生徒、生徒同士の距離が近くて落ち着けるし、授業では毎回全員が指名されるなど緊張感もあります。  つまり、どちらが良いかは子どもの相性なので、オープンスクールや体験授業に参加するのがお勧めです。

大規模校にも小規模校にもそれぞれのメリットがある ※イメージphoto

コース変更はできる?

 公立高の一部には学科が、私立高の多くはコースが設定されています。学科やコースの違いは教育課程表や説明文だけではわかりにくいですが、ポイントは2年進級時などにコース変更ができるかどうかです。入学時に自分の特性や分野との相性、将来の夢などが明確になっている受験生ばかりではないので、途中で変更できるかどうかは一つの判断材料になります。

そのほかのポイント

 中学校を併設する高校は、中学からの進級者と高校からの入学者を分けるかどうかも学校で異なります。また、大学進学に関して指定校推薦の実績はどうか、食堂や図書館、実験室や実習室などの施設や稼働状況なども、特に私立高は学校ごとに大きく異なります。  実業系の高校も就職を含め進路実績が異なります。大阪の公立には総合学科を設置する学校も多く、成城のように大手電鉄や大手メーカーへの就職実績が抜きんでた府立高もあります。また、制服も女子はスカートだけでなくスラックスが選択できる学校が増えました。  近畿圏の公立高はほぼすべてが共学であるため、男子校や女子校を最初から除外する傾向も見られます。しかし、今日まで別学で運営してきたのだから、メリットがあるということです。一度オープンスクールなどで別学の魅力にふれ、学校選択の幅を広げてみるのもいいかも知れません。  学校選びの視点はさまざま。偏差値や通学距離だけにとらわれず、子どもに合った学校を探してみましょう。