人々が集うかき氷屋「Hui hou」

 尼崎市杭瀬の住宅地に、昨年9月にオープンした小さなかき氷屋「Hui hou」。屋号はハワイ語で「また会いましょう」という意味で、大人も子どもも集える、地域の新たなオアシスを目指しているという同店の取り組みを取材した。(仲野恵子)

子どもたちの居場所に

 「子どもたちが、お小遣いを握りしめて来られるようなお店にしたい」そう語るのは、店主の堀井誠さん(39)。かき氷メニューのほとんどが、子どものお小遣いで買える値段設定だ。また、立地は商店街ではなく、通学路になっている住宅地をあえて選んだという。「だって子どもは、商店街より公園とか住宅地で遊ぶでしょ?」と堀井さん。お店の一角には黒板が設置されており、かき氷を食べ終わった子どもたちが、思い思いに落書きをしていく。「ここに来れば、友だちと会える。いつでも誰かと話せる。そんな店舗にしたい」

黒板に思い思いの落書きをする子どもたち

子どもの笑顔が見たくて

 堀井さんは、子どもたちがおいしそうにかき氷を食べている姿を見て「かき氷屋さんになろう」と決心した。思い立ったが吉日とばかりに、翌日、尼崎の氷屋「谷口氷室」の門を叩いた。谷口氷室は、夏場限定でかき氷を販売しており、いつも行列ができるほどの人気店。いきなり訪ねてきたにも関わらず、谷口氷室の店主は、快く氷やシロップ、かき氷器の扱いについて教えてくれた。20年間務めた脱サラからの再スタート。やろうと決心してからオープンまでの3カ月間はまさに、情熱だけで突っ走った。

一年中かき氷が食べられる店

 かき氷といえば夏。暑い日に食べるかき氷は体の中を心地よく冷やしてくれる。夏場のみかき氷を提供する店が多い中、同店は一年中かき氷が食べられる店とした。定番のシロップのほか、独自にオリジナルシロップも開発。今イチオシなのがパティシエ監修の「レアチーズとブルーベリー」。レアチーズケーキを食べているような濃厚な味わいは、大人も大満足だ。無農薬レモンを使った「はちみつレモン」も人気で、薄くスライスしたレモンは皮ごと食べても苦みがない。

 秋にオープンというハンデを逆手に取り、たくさんのアイデアも生まれた。寒くてかき氷が売れないのであれば、暖かいところに持っていけばいいじゃないか。「コタツでかき氷」「テントサウナでかき氷」「銭湯でかき氷」など、冬の間にユニークなイベントを実施してファンを増やしていった。

コタツでかき氷

 そして夏になると各地のイベントや催事に引っ張りだこの人気店となった。尼崎市内だけでなく、呼ばれれば可能な限りどこへでも出店したいという。氷にこだわったふわふわ食感のかき氷は、どこに出しても自信のある商品だ。

地域に根付いた店に

 イベントや催事が増えてくると、店舗で営業できる日が少なくなってくるが、それでも実店舗を構えることにこだわるのは、地域に根付いた店作りがしたいからだ。子どもたちをはじめ、地域の人々に支持され愛される店を作っていくために、堀井さんは日々奮闘している。

イベントや催事に出店する堀井さん

■Hui hou(フイホウ)/兵庫県尼崎市杭瀬北新町3-13-15
https://www.instagram.com/kakikoori_amagasaki_huihou/
※営業カレンダーはInstagramで確認