再生医療などの産業化を進める中之島クロス(大阪市北区)を運営する未来医療推進機構は10月2日、厚生労働省の「創薬クラスターキャンパス整備事業」に昨年度に続いて採択されたと発表した。また、大阪・関西万博で披露された最先端技術の産業化などを支援する「未来創造会議」で、同機構の澤芳樹理事長が再生医療等のプロジェクトリーダーに就任。創薬や再生医療の社会実装を進めるとともに、「健康人生100年」を掲げるロンジェビティ・メディスンを中之島クロスの新たな方向性として打ち出した。(佛崎一成)

創薬クラスターキャンパス整備事業は、中之島クロスを起点に、創薬や再生医療分野のスタートアップ企業の画期的な薬のタネを育て、海外展開までを総合的に支援するプロジェクト。同機構によると、昨年度はスタートアップ22社を支援し、9社を海外展開に導き、支援企業の資金調達額は50億円超に上ったという。
2026、27年度は海外市場への展開を目指す企業などを選び、最先端の医療技術や薬のタネ(シーズ)を持つスタートアップ企業や大手製薬会社、投資家などが一堂に集まる欧州最大級の国際ビジネスマッチングイベント「バイオヨーロッパ」をハブに欧米のライフサイエンスクラスターや投資家との連携を進める。
澤理事長は、大学や研究機関、企業、スタートアップなどが集積し、世界で最も成功している米ボストンを例に挙げ、「この中之島一帯がボストンのような拠点になってほしい」と強調。創薬や再生医療の研究成果を事業化し、世界市場につなげる拠点を大阪に形成する考えを示した。
長寿を新たな産業につなげる
今回の会見で、同機構が中之島クロスの新たな方向性として掲げたのが「ロンジェビティ・メディスン(長寿医学)」だ。澤理事長は「日本で長寿というと、高齢化による社会保障負担や若年人口の減少など、負の側面が注目されやすい」と指摘。一方、海外では日本の長寿に対する関心が高いとして、「世界から見て日本が憧れられる理由の一つが長寿国であることだ」と話した。
ロンジェビティ・メディスンでは単なる寿命の延伸ではなく、100歳まで健康に生活できる「健康人生100年」を目標に据える。再生医療や新薬、医療機器の開発に加え、食生活や住環境、予防なども含め、科学的な根拠に基づいて健康寿命を延ばす取り組みを進める考えだ。
澤理事長は「海外から見れば日本の長寿そのものが研究や産業の基盤になり得ると説明。「世界最高のエビデンス」と表現し、健康長寿に関する知見を新たな製品やサービス、産業につなげる可能性を指摘した。
対象分野についても、再生医療や創薬などの医療分野に限定せず、食品や生活関連企業などの参画も想定しており、異業種との連携による新たな事業創出を目指す。

万博の成果を5年で社会へ
一方、万博のレガシーを継承する「未来創造会議」では、万博で展示、実証された技術や成果について、今後約5年をめどに社会実装につなげる方針が示されている。澤理事長は再生医療等のプロジェクトリーダーを務め、中之島クロスで進める創薬、再生医療の取り組みとも連動させる。
国の創薬支援と万博レガシー、大阪府・大阪市などの取り組みが重なる状況について、澤理事長は「最大のチャンス」と意気込んだ。中之島クロスが開業から約2年を迎えたことにもふれ、「ここからギアチェンジする」と、今後の5年を見据えて機能を強化する考えを示した。
創薬や再生医療を中心としてきた中之島クロスは今後、ロンジェビティを含む幅広いライフサイエンス分野へ対象を広げる。澤理事長は「海外市場を当初から視野に入れながら、大阪を世界に向けて医療技術や事業を発信する拠点にしていきたい」とした。
