神戸港のウォーターフロントに建つ「KOBE PORT MUSEUM」内の劇場型アクアリウム「AQUARIUM X ART atoa」(神戸市中央区)は、アクアリウムとアートを融合させ、物語の世界を体験できるユニークな水族館だ。


2階から4階の3フロアに8つのエリアがある。入り口を入ると最初に体験するのは、浮かび上がる水槽と鏡で覆われた壁にカラフルな照明が降り注ぐ「CAVE / はじまりの洞窟」。


洞窟という設定だが、まるで宇宙空間にいるような不思議な気分にさせてくれる。圧倒されて、水槽の中の魚たちを見忘れてしまわないように注意が必要。

施設内で最も広いスペースを使っているのが「MARINE NOTE / 生命のゆらぎ」。円柱型の水槽が目の前に鎮座し、水槽の中を魚たちが悠々と泳ぎ回っている。

比較的広く間隔を取って、様々な形の円柱形の水槽が設置されていて、360度から水槽内を等しく観察できる。


また、このエリアでは各種のワークショップなども開催される。

水族館の中に森を作った「ELEMENTS / 精霊の森」は、植物と動物が共存する世界を演出している。

ゾウガメが放し飼いのため、室内を歩いていたり、水槽に手を入れると歯のない吸盤状の口で古い角質を食べてくれる「ドクターフィッシュ」体験ができる。


「ドクターフィッシュ」のいる水槽は環境負荷を極限まで減らす先進システム「アクアポニックス」に組み込まれており、その水は隣で栽培されている小松菜や青梗菜を介して浄化されて、また元の水槽に戻ってくるという小さな生態系を形成している。


同じ仕組みは昨年開催された大阪万博のヘルスケアパビリオン前にも設置されていたのは記憶に新しい。
育った植物はゾウガメのエサになるが、来館者が参加してゾウガメにエサをやる体験も用意されていて、エンタメ要素も豊富。
ほかへ目をやると、水槽内にいるデンキウナギと繋がって、来館者が二人で手を繋ぎ、同時にセンサーに触れることで、水槽内の放電パターンと両者のエネルギーが交わり、デンキウナギが導く「二人の相性」を占える、という展示も。


3階へ移動するとそこには壁一面に書籍が並ぶ空間、「FOYER / 探求の室」が現れる。

水族館なのに多数の書籍があり、海や魚に関するものだけでなく建築や食べ物、ロボットなど幅広いジャンルの書籍がある。水族館ということにこだわらず、来館者の興味や関心を引き出せたらいいな、という思いで幅広いジャンルの書籍を取り揃えたという。子どもの目線の先には絵本や図鑑なども置かれている。

ここではそれらの書籍を手にソファや椅子に座ってのんびりと読書を楽しめるのだ。
書籍に囲まれた空間に水槽がごく自然に配置されていたり、巨大なタコのイラストが描かれているが、よく見ると迷路になっている。


その前には床に水槽が広がり、ボルカドットスティングレイというドット柄のエイがいる。

この柄はスタッフが着ているTシャツや上着にも採用されているほど。

次に現れるのは全くの別世界、「MIYABI / 和と灯の間」。

部屋全面に投影される光の切り絵作品の映像は一見の価値あり。

床下に広がる2つの水槽には錦鯉がそれぞれ約100匹ずつ放たれているという。


四季折々の世界を映し出すデジタルアートの世界と錦鯉が融合する様はまさに日本ならでは。
いつまでも見入ってしまう世界を後にして向かうのは、「PLANETS / 奇跡の惑星」。宇宙空間を演出した世界で、展示されている水槽は球体で惑星を現しているとか。

深海をもイメージさせる日本最大規模の球体水槽「AQUA TERRA」は360度全方向から鑑賞でき、ミストとレーザーが織りなす光のベールに包まれている。

AQUA TERRAの中にいる魚は、動き回るのではなく、その場でとどまって泳ぐサクラダイ、キンギョハナダイ、ハナゴイという魚を選んでおり、じっくり眺めることで没入感を楽しんでほしいという。

光と水の演出は一般的な水族館とは全く別世界で、見ているとどんどん引き込まれていく。

3階最後は「GALLERY / 探求の回廊」。壁に飾られた額縁の一つ一つに仕掛けられたアート(デジタルアート・光と影・匂い・音)が五感を刺激する。
最後は4階にある「SKYSHORE / 空辺の庭」。ルーフトップで屋根のある部分と開放的な部分がある。

ここにはペンギンやビーバー、カピパラがおり、すぐそばで彼らを観察できる。


またビーバーがかじった木を使ってキーホルダーを作るワークショップなどもここで開催される。フォトジェニックなフードを購入できるカフェも併設されている。
水族館なのに、魚や水性の生き物以外で目を惹くものが多すぎる不思議な水族館。ともすると魚たちをほとんど見ずに鑑賞を終えてしまうかもしれない、と思うほど楽しい体験が目白押しで、ほかでは体験できないような趣向を凝らした演出が次々と登場する、まさに劇場型アクアリウム。しかし、魚たちが主役であることには代わりはなく、魚たちもそれぞれに興味深いものが多い。
同アクアリウムでは、水族館として楽しむだけでなく、海中のプラスティックの存在やブルーカーボンなど環境問題に目を向けた取り組みなども行っていて、子どもたちの夏休みの研究課題などにも役立ちそう。
神戸市立博物館や「神戸みなと温泉 蓮」「フェリシモチョコレートミュージアム」など神戸市内近隣の施設とのコラボによるさまざまな割引セット券があるのも魅力の一つ。
いろいろな水族館に取材に行くが、同水族館はかなりユニークでほかでは味わえない体験ができる価値ある水族館だ。
営業時間は午前10時から午後7時。最終入場は閉館の30分前まで。年中無休。料金は、大人2600円、小学生(7から12歳)1500円、幼児(3歳以上)500円。詳細はウェブ(https://atoa-kobe.jp/)に掲載。
