西遊記や三国志演義に並ぶ中国四大奇書の一つと言われる「水滸伝」を取り上げた展示会が7月11日から9月6日の期間、大阪市立美術館(天王寺区茶臼山)で開催されている。
同展は、大阪市立美術館開館90周年記念の特別展で、重要文化財7点を含む約300点を展示している。

水滸伝は、英雄たちの反逆を描く、北宋時代の史実をもとに成立した小説で、12世紀、徽宗(きそう)皇帝の治世を舞台に、腐敗した政権に不満を抱いた宋江率いる108人の豪傑が、梁山泊に集う物語。実際にあったとされる史実をユーモアを交えて脚色して書き上げられた小説で、時代を経るとともに加筆、改編され、登場人物が増えたり、ストーリー自体が長くなったりしている。
日本では、水滸伝は江戸時代に一大ブームとなり、曲亭馬琴や葛飾北斎、歌川国芳らの手によって、新たな物語や美術表現が展開していった。現代でも、小説や漫画、映画、ドラマ、ゲームなど、多彩なメディアで広く親しまれいるのは皆が知ってのところ。
大阪市立美術館開館90周年記念特別展「水滸伝」では、その水滸伝を5つの章に分けて、3つの会場で、水滸伝にまつわる中国および日本の美術と資料を展示し、当時の思想や価値観を読み解いていく。
第1会場では、歌川国芳(うたがわ くによし)の出世作「通俗水滸伝」シリーズ 全74図を一挙公開している。

一枚一枚の図からパワーを感じ、細部まで眺めているとあっという間に時間が経ってしまいそう。それほど見る人を魅了する図柄が並んでいる。
それぞれの図は、日本における水滸伝ブームのきっかけの一つともなった、ドラマチックで精彩な英雄像で、中国の水滸伝図像を摂取しつつ、国芳ならではの創意にあふれた傑作になっている。



第2会場では、水滸伝の舞台となった北宋時代末期の社会の様子や文化、人々の暮らしぶりなどを伝える品々が展示されている。巻き絵や屏風、年表、陶磁器、挿絵入り本やカードゲームなどから当時の様子をうかがい知ることができる。





会場内の途中には、当時の町に暮らす人々の様子を伝える「趙浙《清明上河図》」という巻き絵をデジタル化したものがあり、手元のタブレットを操作することで、高精細な絵を拡大して見ることができる。


今から1000年以上前にここまで細かに描き込んだ絵を描いていることにも驚くし、人々の躍動感ある姿にも引き込まれる。
第3会場では、中国から江戸時代の日本へ渡った水滸伝が一大ブームを巻き起こし、葛飾北斎や歌川国芳らに描かれ、浮世絵や玩具、文学にも波及した痕跡を伝える作品が並ぶ。





最後の第5章では、水滸伝が現代まで読み継がれ、どのように漫画、ドラマ、美術へ影響してきたのか、またそれらがどういう形で表現されているのかを紹介している。その中にはWOWOWでドラマ化された「北方謙三 水滸伝」で使用された衣装も3点も含まれる。


3会場で5章に分けられた会場内を巡り終えると、すっかり水滸伝ファンになっているのが目にみえる、それほど興味深い展示内容だった。
水滸伝の物語そのものの面白さに加え、登場人物一人一人の豪傑たちのキャラクターが嬉々として描かれているので、端から順に見ていき、自分のお気に入りを探したくなるし、一人としてスキップしたくない、と思わせるほどレベルの高い作品が並んでいた。
また、当時の様子や社会背景、生死をかけた戦いや、108人の豪傑たちの「義」に触れることで、感情移入もしやすくなっているのもユニークなポイントかもしれない。
展覧会としては、108人の豪傑たちの生き様や価値観がどのように描かれ、受け取られてきたのかをたどり、水滸伝が今なお人々を惹きつける理由を探ったり、美術を通して、水滸伝の時代背景や世界観を紹介することで、水滸伝のさらなる魅力に出会える、そんな展覧会だ。

開館時間は午前9時半から午後5時(入館は午後4時半まで)。休館日は月曜日(ただし、7月20日・8月10日は開館)と7月21日。観覧料は一般2,000円、高大生1,400円、小中生500円(いずれも税込)。
■展覧会公式サイト https://www.yomiuri-osaka.com/lp/suikoden/
