日本の四季はどこへ行った? 〝長い夏〟と突然の冬異常気象時代の発想転換

 12月に入ったばかりの先週半ば、日本列島に大陸からの寒気が一気に日本海を越えて流れ込み、海沿いの日本海側は突然の冬景色。今年は「初雪の便りが大雪に」という地点が多く、近畿でも京都や滋賀、奈良、和歌山で例年より早い初雪となった。

 南北に長く延びる我が国は美しい四季の彩りで外国人観光客のあこがれだったが、今年の「新語・流行語」ベスト10に春秋の消滅を意味する〝二季〟が選ばれた。「いやいや日本の冬は延びていない。むしろ夏の猛暑が異常に長く〝人が道を歩けないほど危険な酷暑〟という新たな季節が生まれたから〝五季〟だ」という説もある。こうした日本列島を取り巻く自然環境の現状と社会生活への影響を考えた。

大雪に包まれた京都・伏見稲荷大社。近年は〝初雪が大雪に〟という地域が増えている(数年前に編集部が撮影)
強烈な日差しの下、日傘で身を守りながら順番待ちをする来場者たち=大阪・関西万博会場(2025年6月、編集部撮影)

〝長い夏〟常態化 地球温暖化、激化! 暮らしと産業に迫る再設計

〝長い夏〟当たり前に

 急に冬になると日本海側は雪雲が低くたれ込め、山地を越えた太平洋側は一転カラカラ乾燥の晴天続きが典型的な気象配置。今年は10、11月の寒さが緩やかだった分、体が寒気に慣れておらず今回の冷え込みで体調を崩す人が続出、インフルエンザも一気に感染拡大した。高齢者が心筋梗塞や脳いっ血を起こしやすいのもこの時期で、就寝中の寒暖差に要注意だ。

 昭和・平成時代の大阪の夏は、天神祭(7月25日)直前に梅雨明けする事が多く、日差しが急に厳しくなったものだ。それでも8月中旬のお盆時期を過ぎ土用波(台風がもたらす高波)が立つ下旬になると朝夕めっきり涼しくなり、自然に過ごしやすくなっていた。ところが令和に入ると梅雨明け自体が早まり6月後半には既に暑さが到来し、そのまま9月中どころか10月まで最高気温30℃の日が出現。ピークの7月下旬からの約1カ月間は屋外を歩くことも危険な35℃超えの猛暑がかつての秋本番まで続く始末。「暑さ寒さも彼岸まで」(「秋分の日」今年は9月23日、「春分の日」同3月20日)ということわざがあるが「寒さは確かに3月一杯で終わるが、暑さは9月一杯では終わらない」というのが大阪での生活実感だ。

地球温暖化と気候変動対策

 ドナルド・トランプ米大統領は地球温暖化自体を全否定し「寒暖は周期的に繰り返されるものだ」と主張しパリ協定を二度に渡り脱退。環境対策費支出を拒絶し、米国内での石油や石炭といった石化燃料消費を推奨している。

 環境問題はテレビや新聞などで再三取り上げられても一般の反響は少なく関心は極めて薄い。私たちは街でエコと呼ばれるプラスチックやビニールの使用を控えるのはかなり慣れたが、充電インフラ整備が遅れているEV(電気)自動車購入や初期投資の割に資金回収が遅い戸別太陽パネル設置までは二の足を踏みがち。まずは自宅窓ガラスに断熱フィルムを貼り、猛暑・極寒時の室温対策から始めた方がずっと合理的だ。

経済界も発想転換必至

 列島全体の長い酷暑と日本海側大雪が続くと産業界自体の対策が本格化してくる。

 まず農水産業が変わってくる。ここ数年騒がれた米不足も元はと言えば夏の高温で稲の実入りが悪く1等米が不足した事から。夏野菜の作柄も暑すぎて芳しくない。漁港で水揚げされる魚種が海水温上昇でどんどん変わってきているのは知られているが、日本が得意とする養殖漁業は海中いけすが水温や塩分濃度の変化影響を受けやすく大量死が起きる危険性が増す。

 観光やスポーツなども酷暑で客足が減るだけでなく、イベントは屋内や夜間の開催に限られてくる。既に夏の甲子園大会も猛暑時間帯の試合実施を取りやめている。中学や高校の夏休みを利用したスポーツ大会も日程消化に苦労しそうだ。

 製造業では空調設備の稼働時間や機材冷却時間が延びエネルギーコストが上昇。建設や物流など屋外作業が多い業種は、熱中症や慢性疲労のリスクが増大し欠勤や離職が増える。当然、単純に「お盆一斉夏休み」では済まなくなり、夏場は早朝や夕方への勤務時間変更や時差出勤・時短を余儀なくされる。通勤・通学も例外ではない。予想気温によってはリモートによる自宅でのオフィスワークや授業受講も増えるだろう。

 大事なことは経営者が酷暑・豪雪などの時期を「経営課題」として受け止め、働き方改革同様に普段から取り組みを行う時代になりつつある、という現状認識だ。自治体や経済界も環境由来の職場改善に各種の補助金を用意するケースが増えている。省エネ設備導入に関する初期費用削減を図り、長期計画での取り組みに目を向ける時代が到来している。

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