災害時、自宅を避難所に 家庭向け「ATバリアLite」が〝空気防災〟 プロテクトアーツが発売 放射性物質やウイルスも除去

 国が地下シェルター整備を急いでいる。10月に就任した高市早苗総理は金子恭之国交相に、武力攻撃や大規模災害時の避難体制強化を目的に「既存インフラの多角的利用」も含め「地下シェルター整備」を求めている。

換気装置を設置した地下シェルターのイメージ=ヤブシタグループ提供

 現在、政府は地震や豪雨など災害時の空気汚染リスクを懸念し、地下施設を一時避難場所に指定する取り組みを強化中だ。政府の実態調査では全国3929の一時避難地下施設のうち、緊急一時避難施設に指定されていない施設が1845と半数近くあり、住民がすぐに避難できない地域が数多く残されている。

自宅の一室を一時シェルターに 「ATバリアLite」発売

 こうした中、汚染された空気の有害物質を除去する「ATバリア」を展開し、大阪にも営業所を開設したヤブシタグループのプロテクトアーツ(札幌市)は11月29日、家庭など小規模空間向けの換気装置「ATバリアLite(ライト)」を発売した。自宅の一室を一時シェルターにでき、避難所へ移動するまでの空白時間に汚染された空気から命の安全を確保する。

多層フィルターと静音設計 避難所の感染症リスクも低減

 同装置は、外気を取り込みながらPM2.5や粉じん、放射性物質、ウイルス、細菌などを多層フィルターで除去。人力で運べる軽さが特徴で、自宅から避難所や応急医療テント、仮設住宅にも持ち込める。さらに、人が密集する避難所で稼働させれば、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症リスクも大幅に下げられるという。こうした避難所利用なども想定し、夜間でも運用しやすいよう稼働音を小さく抑えた。

軽量化した換気装置「ATバリアLite」

小熊社長「日本から空気防災の新基準を」

 同社の小熊正輝社長は「昨今、地震や豪雨など災害が頻発しており、避難所や応急医療テントの『空気の安全確保』が課題。「ATバリアLite」は停電下でも稼働する可搬型換気装置で感染症拡大や二次被害を防ぐ。地政学的リスクの高い日本から、空気防災の新基準を発信していきたい』と話している。

普及率0.02% シェルター後進国の日本

 地下シェルターの普及率が0.02%にとどまる日本は、専門家から「シェルター後進国」とも指摘されてきた。国の基準づくりがようやく動き出した一方で、「避難先そのもの」だけでなく、住民が避難所へ移動するまでの〝守られていない時間〟をどう埋めるかも新たな課題として浮上している。

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