〝まっとうな商売〟で信頼構築、生鮮スーパー「黒門中川」の挑戦 昼網直送にレア野菜も

 大阪・日本橋の黒門市場は、古くから「天下の台所」として、なにわの食文化を支えてきた。しかし近年は、インバウンド向けの食べ歩きスポットへと姿を変え、ネット上では「ぼったくり商店街」と揶揄されることもある。そんな中、周囲に流されることなく、地域の飲食店や住民に寄り添った商売を貫き、鮮度の良い魚介類や青果、精肉を適正価格で提供するスーパー「黒門中川」は異彩を放つ存在だ。そんな同店の売り場づくりに密着した。

鮮度は漁港級!

 黒門中川といえば、やはり鮮魚は外せない。鮮魚部の社員4人が毎朝4時前から大阪市中央卸売市場に足を運び、信頼できる仲買人から魚介類を仕入れている。その確かな目利きは、ミナミの料亭や割烹、和食店からも厚い支持を集める。「泳いでる鮎や鯉が欲しい」「今日はすっぽんある?」といった注文が入ることも珍しくない。

黒門中川の鮮魚部は、ミナミの料亭や割烹から絶大な支持を集めている

 今年春には売り場をリニューアルし、鮮魚コーナーの面積を拡大。料理人だけでなく、一般家庭や子ども連れの家族客の来店も目に見えて増えた。中でも人気なのが、「鮮度に自信あり」の刺身と寿司だ。丸魚で仕入れた鮮魚を店内で捌き、刺身や寿司に仕上げる。アワビ、イサキ、キンキ、キンメなど天然ネタを使った寿司がずらりと陳列されたショーケースは圧巻だ。

丸魚で仕入れた鮮魚を刺身や寿司に仕上げるので、鮮度は抜群

 9月からは新たな試みとして、毎週土曜日に「昼網(ひるあみ)」を開始。明石浦漁業協同組合の競りで当日水揚げされた魚介類を、水槽に入れたままトラックで直送し、午後2時頃から店頭に並べる。取材日には鯛、タコ、じゃこえび、サワラ、ヒラメ、生しらす、ガシラ(カサゴ)などが入荷。生しらすを軍艦巻きに仕立てて販売したところ、飛ぶように売れていた。

明石浦漁港から直送されたガシラ(カサゴ)。刺身で食べるとほんのり甘かった。煮付けや唐揚げもおすすめだという

 「昼網」では、何が入荷するかは当日になるまで分からない。まるで「宝探し」のようなワクワク感を楽しんでもらいたい。

トラックの水槽から荷下ろしされる鯛。まな板の上でもまだピチピチと元気よく跳ねていた

レア野菜の宝庫

 「収穫の秋」を迎え、青果コーナーには旬の野菜や果物が勢ぞろい。松茸に柿、梨、シャインマスカットなど、思わず目移りしてしまう品々が所狭しと並ぶ。これらは店頭の一番手前で季節の移ろいを伝える「主役」だが、黒門中川の青果部にはもう一つ、ちょっと変わった楽しみ方がある。

ビーツにホースラディッシュ、一般のスーパーでは見かけない珍しい野菜が並ぶ

 冷蔵ショーケースをのぞくと、「これ、誰が買うの!?」と思わず突っ込んでしまうような商品が目に飛び込んでくる。ビーツ、ホースラディッシュ、大和芋、生わさびなど一般のスーパーではあまり見かけない品ばかりだ。仕入れを担当するのは、この道50年近いベテラン社員。「珍しい商品があると、お客さんが目的を持って買いに来てくれる」と笑顔を見せる。そんな話をしている最中にも、来店客がすだちの業務用大箱を抱えてレジへと向かっていった。

強い粘りと豊かな風味が特徴の山芋の一種「大和芋」
生わさびがこれだけそろっているのも圧巻だ

肉を店内で成形・加工

 精肉コーナーもまた、50年近いキャリアを誇るベテラン社員が切り盛りしている。定番の部位はもちろん、ランプ、マルシン、イチボ、ヒウチ、カイノミ、ラムシン、シャトーブリアンといった希少部位まで幅広くそろえる。

希少部位も豊富にラインアップする精肉コーナー

 多くのスーパーが工場で加工したものを店舗に納品しているのに対し、黒門中川ではメーカーから直接仕入れ、店舗で成形・加工して販売。その鮮度は他の追随を許さない。さらに、中間コストを大幅にカットしているため、担当者は「百貨店などに比べて相場よりお買い得になっている」と太鼓判を押す。

黒毛和牛のヒレ。メーカーから直接仕入れ、店舗で成形・加工する

 ちなみに精肉部の隠れた人気メニューは「国産牛のボイルすじ」。大阪名物のどて焼きをはじめ、おでん、カレー、ピラフなど幅広い料理に使える〝万能選手〟として評判だ。ぜひ一度試してみてほしい。

精肉部の隠れた人気メニュー「国産牛のボイルすじ」

■生鮮館 黒門中川/大阪市中央区日本橋1-21-5(黒門市場内)/電話06(6646)6601

タイトルとURLをコピーしました