中村工務店が掲げる〝減築〟と〝究極のミニマリズム〟

職人と共に創る「唯一無二」の価値
「うちは大工さんや塗装職人、ブロック職人まで自社で抱えています」と中村社長は語る。昨今の建築業界では、現場作業を外注し、プレカットされた建材をプラモデルのように組み立てる手法が主流となりつつある。しかし同社は、職人が木材を加工する「刻み場」を内製化するなど、あえてその逆の道を行く。「こだわったもの、唯一無二なものを作れる」という強みは、この自社施工体制から生まれる。
中村社長が大切にするのは、「経験値や人との繋がり、想いといった目に見えないもの」だ。かつて業界で目の当たりにした、数をこなし利益計算ばかりを優先する風潮に疑問を感じ、「自分が作りたくない家は作らない」と決意。大企業とは異なる土俵で、顧客一人ひとりと真摯に向き合う道を選んだ。

発想の転換〝減築〟で資産を生かす
同社の真骨頂は、空き家問題への斬新なアプローチにある。リフォーム費用が新築を上回ることもある古い文化住宅を、あえて駐輪場やシェアハウス、エステサロンなどに用途変更する提案は、他社の追随を許さない。中でも特にユニークなのが〝減築〟という考え方だ。既存の建物の一部を取り壊し、延べ床面積を減らす工事で、老朽化対策や維持費の軽減、税負担の削減などの効果があり、空き家対策の新たな手法として注目されている。
例えば、広い家に住む高齢夫婦に対し、使っていない部屋を取り壊して家を小さくすることを提案する。これにより、固定資産税の負担が軽減されるだけでなく、空いた土地を駐車場として貸し出せば新たな収入源にもなりうる。「思い出の家を小さくするのか」という心情的な抵抗もあるため、この提案には顧客との深い信頼関係が不可欠だ。中村社長は「自分が子どもの立場で、その家を相続したいと思えるか」という視点を率直に伝え、顧客と共に最適な未来を考える。先祖代々の土地という「縛り」から所有者を解放し、次世代に負の遺産を残さないための「正直」な提案だ。
ミニマリスト住宅で新たな住まいの形を
一方で、社長自身は究極のミニマリスト思想を実践する。老夫婦なら40平方㍍あれば十分とし、広い家よりも小さく機能的な空間を提案。現在は約15平方㍍という究極のミニマル住宅の試作を進めており、門真エリアでの完成物件には社長自身がセカンドハウスとして過度な見栄や所有にとらわれない生き方を実践している。
「志ある事業にしか人も資金も集まらない。その信念で地域に貢献したい」と語る社長。構造や断熱の学びを重ね、ラグビーで培った「正面から向き合う」精神を原動力に、地域の暮らしをより良くする〝正直な工務店〟として新たな価値創造に挑んでいる。