神戸ストーカー殺人 容疑者「面識ない」
神戸市中央区のマンションで8月20日夜、片山恵さん(24)が胸などを複数回刺され死亡した。殺人の疑いで逮捕された谷本将志容疑者は「面識はない」と供述し、数日前から被害者の行動を追い「タイプだと思った」と話しているという。容疑者は過去に別女性へのつきまとい・暴行で懲役2年6カ月(執行猶予5年)判決を受けていた記録があり、事件前には職場周辺を徘徊(はいかい)する姿が防犯カメラに記録されていた。

進む法整備、届かぬ現場 神戸・川崎が映すストーカー対策
神戸市のマンションで、見ず知らずの住人女性をストーキングし殺害に至った今回の事件。同種の事案は直近でも続く。 (竹居真樹)

神奈川・川崎市のストーカー事件では、20歳の女性が昨年12月に行方不明となり、今年4月30日に元交際相手宅床下から遺体で見つかった。男は死体遺棄容疑で逮捕後、殺人容疑で再逮捕。神奈川県警は対応不備を認め、本部長ら43人を処分した。相談は前年6月から複数回寄せられていたが、危険性の見立てと初動に課題が残った。
ストーカー規制は2000年の法制定後、13年に連続メール送信、16年にSNSメッセージやブログ書き込み、21年にGPSなど無承諾位置取得や「実際にいる場所」での見張りなどを規制に加え、段階的に強化されてきた。それでも24年のストーカー法違反の検挙は1341件(前年比24.1%増で過去最多)、公安委員会の禁止命令などは2415件に達した。警察庁では被害者の申し出なしに警告できる法改正を検討している。
【課題は3つ】
①「たまたま狙われる型」への注意不足
面識がなくても短期間の〝張り付き〟で標的にされるケースも。街や職場での不審者情報を早めに共有できる〝目〟を増やす必要がある。
②禁止命令のあとが弱い
命令を出して終わりになりがち。加害者の治療・カウンセリングを実際に続けさせる仕組み(同行支援、通院確認、家族・自治体のフォロー)が必要。
③「徘徊」段階で止める体制が弱い
不審徘徊を見た時点で、近隣→警察へ即通報、警察は素早く職質→警告までつなぐ〝近道〟を用意する。勤務先・管理会社・警察の連絡線を一本化し、対応の責任者を決めておく。
【被害に遭わないために】
オートロックの出入口では、入る前に後ろに人がいないか必ず確認を。誰かが一緒に入ってきたら、いったん郵便受けを見に行くふりで距離をとり、同じエレベーターに乗らない(時間をずらすか、階段を選ぶ)。帰宅経路と時刻を変える。建物へ入る前に背後を確認し不審を感じたら交番・店舗へ駆け込む。夜は明るい道を選び、宅配は置き配固定や宅配ボックスを活用。