人口4万人弱、世界で2番目に小さい国土を持つ国がモナコ公国。しかし、国を挙げて海洋環境の保護に努めている。自国の海だけでなく、世界中の海洋環境を保護、保全するための活動を行っていて、その一端をモナコパビリオンでは展示、紹介しているのだ。
4階建ての丸い建物がどうしても目立つが、同館のメインコンテンツはその隣にある庭園に設置されている。
4階建ての建物は1階と2階でモナコのデジタル技術を体験したりモナコの魅力を紹介するビデオを見たりできるようになっている。3階はワインバー、4階は展望スペースとなっているが、ワインを購入した人がくつろぐための場所のようだ。どちらかというと観光というより、商談スペースといったところか。
その建物を出て、庭園に移動すると、最初に丸いガラス張りの建物があり、ここでモナコの海洋保護の取り組みやこれまでの歴史を紹介している。
いくつかある横長のデジタル画面にタッチしたり画面をスライドさせていくといろんな情報が表示されるようになっている。
ここでは周りを気にせずゆっくり、じっくり表示されるデータや情報を読み込んでほしい。
それ以外にもデジタルブックが置いてあるが、少し新しいスタイルを採用しているようだ。透明のプラスチックボードでできたページがあり、それをめくると画像や情報が表示されていくので、子どもたちが喜ぶことは間違いなしだ。
次に体験するのは、日本の双六(すごろく)に似たボードゲーム。
野生動物の生態や環境についての問題を解きながらコマを進めていくもので、子どもだけでなく大人も十分楽しめる内容になっている。
またボードゲームの周りにはパネルがたくさん貼ってあり、一つずつ見ていくと野生動物についてかなり学べる。
その隣にはなんと樹齢500年のオリーブの木があり、一般的なイメージのオリーブの木とは全く違い、「こんなに長生きするのか」と、「こんなに大きくなるのか」と2つの驚きがあった。命懸けでやってきたオリーブの木なので、しっかり鑑賞してほしい!
次に体験するのは、摩訶不思議な世界。デジタル技術を駆使して海洋環境で生活する動植物180種類のイラストが壁に描かれているが、希少生物(赤)、多様性(緑)、大型生物(青)と色が分けられていて、そのイラストにそれぞれの色の照明が当たると、その色のイラストが浮かび上がったように見える仕組みになっている。
これは言葉で伝えるより、見ていくしかない展示だ。そしてこちらの白いキノコのようなもの。
そばにいくと海の音や声が聞こえてきて癒やされる。急ぎがちなパビリオンの鑑賞の中、少し足を止めて、流れる音に没入してみるのも良い。
また、同室内にはこんなものも。
透明の半球カバーがついたものは、画面に現れる潜水艦を左右にあるボタンで上下させると、各ポイントでモナコが支援している世界各地の様々な珊瑚礁保護の取り組みについて学ぶことができる。
ほかのパビリオンでも環境保護や取り組みを紹介しているが、自国の取り組みが多く、世界中の取り組みを紹介しているのは珍しい。その辺りにモナコという国の立ち位置が現れているようだ。
色々と説明を聞きながら照明によって現れる海洋生物を見て、潜水艦を上下させて、とやっているとどんどん時間が過ぎていってしまう。
最後に出会うのはミツバチの世界。
ミツバチが花の蜜を集める際に花粉を運んでくれることは周知のことだと思うが、そのミツバチがもし絶滅したら、私たち人間も4年以内に絶滅するといわれていることも知っているだろうか?
そのくらいミツバチは私たちの生活そのもの、または生存に対して大きな存在なのだ。しかし、私たちの経済活動がそのミツバチを苦しめている。
ボードではミツバチの生態や活動についてのプチ情報を提供してくれているので、この機会にミツバチについてたくさん学んでほしい。
同館は、デジタル機器やコンテンツの規模や迫力で迫るものではないが、随所に学びがあり、驚きがあり、好奇心や興味を刺激してくれ、知的好奇心を上げてくれる、そんなパビリオンだ。
世界で2番目に小さい国でありながら、世界の海洋環境を見守り、保護する視点や行動からは学ぶべきものがたくさんあった。